日常まち歩きの心得 イメージのスイッチ

いつもは何気なく歩く通勤通学路、買物ルート… 毎日の空間を楽しむココロエ

いつも通る道や電車、バスからの風景は、風景として意識していないほどに見なれたものになっていると思われがちだ。しかし電車やバスは周りを見ていなくても目的地まで連れて行ってくれるのだから、意外と景色を見ていないことも多い。意識して車窓から外を見ると、ふと気になるところがあるかもしれない。この景色にもう一歩踏み込んでみよう。

電車、もしくはバスを一歩降りると知らないまちが広がっている。遠くで見下ろしていた寺院の塔をその真下から見上げてみる。そびえ立ったビルの裏に緑がいっぱいの公園がある。これまで見えなかった物が出発点の風景のイメージに組み込まれて行く。

さらには、ふざけあいながら自転車で通り過ぎる子供達、ぬくぬく昼寝をする犬。沈丁花の香りという、たまたま歩いた時に出会ったものや出来事までもがその景色へのイメージをつくっていく。歩いて集めた情報によって、いつもの風景に自分だけの厚みがついてくる。


北尾 琴(きたおこと)
1975年神戸市生まれ 武庫川女子大学 生活環境学部 生活環境学科 建築都市設計学研究室助手