ウチらの地元

女子高生が感じる地元尼崎への想いを尼崎出身の社会学者・永井センセーがインタビュー。彼女らのたまり場で“ウチらの本音”に迫ってみた。

―普段はどんなところで遊んでるの?

まりな・かんな・みほし「つかしんです!」

かんな 「フードコートとかでずっと喋ってるなぁ。行けば誰かに会うし」

まりな 「夏休みとかほぼ毎日行ってなかった?」

かんな 「時々プリクラとったりね」

りょうこ 「うちらはココエやね」

ゆうか 「あと梅田にいったり」

みほし 「うんショッピングは梅田かな」

―尼崎のいいところってどんなところかな?

ゆうか 「人がフレンドリーで、けっこう話しかけてくる」

りょうこ 「阪神尼の方はけっこう都会やけど、この辺とかはけっこう田んぼとかあって、都会と田舎の中間ていうか」

かんな 「梅田にも三宮にもすぐ行ける!」

―それ、尼の人はみんな言うよね。そして近所で引っ越しを繰り返すっていう。

全員 (笑)

かんな 「じゃあ、坂道がないので自転車が楽!」

―それもみんな言うね(笑)。反対にいやなところは?

まりな 「市外のひとにガラが悪いって言われるのが…」

りょうこ 「うんうん」

ゆうか 「西宮とはちょっと違うよね」

―なるほど。じゃあ、よその人に尼崎の自慢できるとこって何だろう?

みほし 「何やろ?」

かんな 「尼崎出身の芸能人とかが多いとこかな」

―たとえば誰?

全員 「ダウンタウン!」

りょうこ 「そうそう。そんで、それがけっこういろんなところでつながってたりとか」

ゆうか 「世間がせまい(笑)」

まりな 「つながりが濃い(笑)」

―みんな尼崎のことは好き?

全員 「はい!」

―ずっと住みたい?

まりな 「うーん。ひとり暮らしなら大阪とか東京とか」

みほし 「私はダンスに興味があるからニューヨークとか行ってみたい」

りょうこ 「私も。流行の最先端を感じたい」

ゆうか 「でも、離れたらこわいかも・・・」

かんな 「出ていきたいけど出ていきたくないような。でもいつかは帰ってきたいっていうか、ジモトはここであって欲しいな」

全員 「うんうん」

―じゃあ最後に。もし市長になったら何をしたい?

かんな 「市民全員参加の鬼ごっこ!」

りょうこ 「悪いイメージを払拭したい!」

ゆうか 「すぐにクラクションをならすタクシーを何とかしたいです!」

まりな 「尼を舞台にしたドラマをつくりたい!」

かんな 「何それ?」

全員 (笑)

まりな 「あまちゃんみたいなやつ。おもしろそうじゃない?」

みほし 「急にそんなん言い出すあんたがおもろいわ(笑)。私は夜帰る時怖いので、道を明るくしたいです」

かんな 「今度はえらい具体的や(笑)」

りょうこ 「でも、お金かかりそう」

まりな 「やっぱりその費用を稼ぐためにドラマを…」

全員 「もうええって(笑)」


女子高生らしい、話題と笑いの絶えない楽しいインタビューだった。内容を一読してわかるとおり、(少なくとも30代半ばの僕からみて)「今どきの」という修飾が不要なほど、世代を超えた「尼っ子気質」が彼女たちには受け継がれていた。一方で地域社会を崩壊させる悪玉としてみられることも多いショッピングモールが、実はジモト意識を育てる場として機能していることは興味深い。また、インタビューでも名前のあがったダウンタウンが散々アマをネタにしたことによって、否定的な印象は幾分か中和され、肯定的な価値観が強まっているのかもしれない。

残念ながら時間の都合上、彼女たちのジモト観の深いところまで掘り下げることはできなかったのだが、いつかそれをドラマという形で見せてくれることを期待したい。

ウチらのたまり場 クレープハウス「メリールウ」

富松店、フェスタ立花店、系列のレストラン「ふらいぱん(南武庫之荘)」と市内に3店舗で営業するクレープハウス。カスタードやチョコレートなどのスイーツ系からツナエッグといったおかず系まで常時50種類以上。名物のシンプルなバターシュガー(200円)とともに、店主の長岐みどりさんのファンは多い。


取材・構成 永井純一