サイハッケン 市役所からお宝写真が発掘された。
長く住んでいても意外と知らないまちの愉しみ。「へえ~」と目からウロコの再発見!
ディープサウスの魅力をご堪能ください。
阪神尼崎駅が高架になり、五合橋線のガードができて間もない昭和39年の駅前風景。ボンネット型の市バスの奥には懐かしい巨大ガスタンクが見える。
尼崎の歴史というと、尼崎城址や田能遺跡など様々な時代の物を市内で見ることができる。しかし、それらが示す時代が近所のオッチャンの思い出話や自分の昔の記憶に直接リンクし、ルーツを感じられるか、というと、なかなかピンと来ない事が多いのではなかろうか。
アマにまつわる少し前の話に出てくる「国道2号線の十間交差点の北側にあった大きなガスタンク」のような、ちょっと昔の日常風景というのは、あまり記録には残っていないのである。
日々そんな思いを感じていたところ、市役所の地下倉庫から35ミリネガフィルム約8千本に及ぶ膨大な写真が発見され、尼崎市立地域研究史料館にて整理中との報を受けた。写真は昭和初期から市役所の広報課が撮り集めたもので、「市報あまがさき」の掲載用に撮影したカットなどが含まれているそうだ。
早速拝見すると、役所の式典や工事の記録、商店街の風景など貴重な写真が見つかった。30数年前の車を所有する筆者としては、消防車や市バス、果てはバキュームカーといった「はたらく自動車」の写真に目が止まった。決してスマートではないが、生活感あふれる魅力的な車たちだ。
この話をたまたま縁のあったカー雑誌の編集者に伝えたところ、これらの写真を使って高速有鉛デラックスという雑誌にて『街角のモータリゼーション』という連載を始めることとなった。ピカピカのスポーツカーが載った次のページに、昭和30年代のゴミ収集車の写真が載った本が全国の書店に並ぶ、こんなことがあっていいのだろうか?と思いながら、尼崎市立地域研究史料館のバックアップのもと、尼崎市内の検診車などマニアックなテーマで執筆中である。
取材と文/井上 衛
1973年生まれ。尼崎在住。はたらく自動車図鑑と共に大きくになってしまった困った大人。