尼的観光地図(マップ) 第7回【崇徳院界隈】

尼崎南部を旅人気分で歩いてみた。

出会いと別れが交差する由緒正しきリバーサイド

瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ―

岩にせき止められ分かれた急流が下流でひとつになるように、仲を裂かれた二人も将来は一緒になろうと歌った、何とも胸キュンなラブソングである。この作者「崇徳院」と同じ名の町というだけで、歩く前から淡い妄想が膨らむ。

「崇徳院」と彫られた石碑が出迎えてくれるこの町は、風格ある家が随所にみられる住宅街である。そんな中、2号線沿いに一風変わった建物が出現する。尼崎拘置所である。正面からの眺めはオフィスビルといっても違和感のない構えだが、裏手にまわると一変、無機質な壁が続く不思議な空間となる。

壁は4メートルほどの高さで、内部を覗くことはできない。壁には等間隔に並ぶ控壁と、ノブなしのドアがぽつんとはめ込まれているだけである。

このドアから出てくる時、崇徳院の和歌のように、別れてしまった大切な人と一緒に過ごす日が待っているだろうか。そんな拘置所の中で過ごす人の人生を想いながら白い壁と青空のコントラストを眺める心の旅も、たまにはいい。

1 尼崎拘置所の裏側
高さ4メートルの壁は、近づくとなかなかの迫力。
2 商店街看板 あれ?ペ○ちゃん?
どんな商店か一目でわかるように、店名の上にロゴが描かれている。中には有名キャラクター風のものも…
3 食欲そそる書体
飲食店は豪快な文字の看板が目立つ。「めし」と飾らず表現するところが下町らしい。
4 立小便お断り
お決まりの鳥居が描かれた壁。鳥居の効果があるかは謎である。
5 蓬川公園
遊具、広場、野球場充実のパークライフ
【アクセス】センタープール前駅から北へ8分

旅人が(独断で)つけた通信簿

拘置所の壁に移る樹木の影を撮影するもよし、逢川公園で自然を楽しむもよし、大衆食堂でめしを食うもよしと、全体のバランスが取れた町である。


尼の旅人:出口寛子(でぐちひろこ)
武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科・助手 兼 大学院生