尼崎の地名を読み解く傾向と対策
古くは6村が合併してできた尼崎市。地名から地区ごとの特徴が読み取れるという。尼崎市立地域研究史料館、辻川敦さんに話を聞いた。「地名の由来のほとんどは、確証があるわけではありません。しかし、色々と推測することでまちの変遷を探ることができます。尼崎の場合とくに、集落の成立過程や歴史と密接に関わっています」。
[武庫地区] サムライ系
時友・友行・常吉・常松
中世、源氏による名田や荘園が発展したため、よく似た地侍の名前が地名に残る。
武庫●難波都から見て「向こう」にあったという説がある。
[立花地区] 混在型
塚口(古代系)・栗山(サムライ系)・尾浜(さんずい系)
地理的に中間に位置する立花地区では、地名のタイプが混在している。
塚口●塚(古墳)が多く発見されている。阪急開発により、周辺に塚口本町や南塚口町といった塚口エリアが広がった。
[園田地区] 古代難読系
田能(たのう)・食満(けま)・椎堂(しどう)・穴太(あのう)・額田(ぬかた)
弥生時代の「田能遺跡」が発見された園田地区は、古代の語感を残した難読地名が多い。
食満●農作物が多くとれた場所という由来がある。
[大庄地区] デベロッパー系
平左衛門・又兵衛・道意
海岸部の埋め立てで広がった大庄地区。道意や又兵衛、平左衛門は江戸時代の新田開発者の名前である。
[本庁地区] ストリート系
昭和通・南通・神田北・中・南通
城下町を思わせる地名も残るが、戦後の市街化にともない、昭和通、神田中通といった通りを基準にした便宜上の住居表示がつけられた。
大物●大物主命、大仏、大きな材木…由来には諸説ある
[小田地区] さんずい系
長洲・潮江・浜・杭瀬
中世には瀬戸内海の外海として発展した小田地区。水辺の雰囲気を残すさんずいの地名が多い。
杭瀬●文字通り海岸に杭を打ち並べて造成したのだろう。
参考文献 「尼崎地域史事典」「尼崎の地名」(ともに尼崎市) 取材協力 尼崎市立地域研究史料館