複雑な由来だけじゃない。意外と単純に付けられてるものです。

扶桑町

住友金属、住友精密、住金機工、住友金属建材、住金溶接工業…住友グループが町域のほとんどを占める扶桑町。

地名の由来は、財閥解体で住友プロペラに代わりできた扶桑金属から付けられたとされている。地名まで住友関連である。ちなみに扶桑とは日本国の異称。


七松町

七本松と記されている文書もある。かつて、七本の大きな松があったのだろうという、いたって明解な由来が伝えられている。


名神町

名神高速道路尼崎インター周辺が名神町とは分かりやすい。今から考えるとずいぶん安易なネーミングだが、名神高速が開通した63年当時、多くの人々が高速道路によるまちの発展を信じていた。当時の意気込みを感じさせる地名である。


扇町、末広町、鶴町

戦前、尼崎築港によってすすめられた臨海地域の埋め立てで、次々と新たな土地が造成されていった。この時期の臨海部の地名は縁起をかついだおめでたい名前ばかり。


武庫之荘

豊かな農地が広がる武庫ノ庄村に、イギリス田園都市を作ろうと阪急電鉄の創始者小林一三が住宅開発に乗り出した。阪急武庫之荘駅が完成したのは昭和13年のことだった。

この時、小林は「武庫ノ庄」から「武庫之荘」に漢字を改めた。伝統を感じさせる「之」と荘園を連想させる「荘」の文字により、まちのブランドというものを強く意識したのである。

住居表示って何?

日本には古くからの地名として字(あざ)があった。しかし戦後、より合理的で把握しやすい住所をつけるために、「住居表示に関する法律」(1962年)が施行された。これにより各地で、伝統ある小字を廃止し街区や道路を基準にした住居表示が広まった。しかし90年代に入り、改めてまちのアイデンティティを問う風潮が高まり、字(あざ)を地域の伝承や歴史性と捉えて見直す動きが起こりつつある。


参考文献 「尼崎地域史事典」「尼崎の地名」(ともに尼崎市) 取材協力 尼崎市立地域研究史料館