メガネ、メガネ… 今回のお題は【隅切り】sumi-kiri

尼崎で見つけた気になる光景。ほぼ妄想
写真と文:山下祐生

「隅切り」を説明せねばならぬ。100文字以内で。角の立った美しく四角い羊羹を買う。それを手に取った店員は突然その一角を切り落とす。あなたは一角を失った羊羹を受け取る。これの土地版である…「スマホでチェケラー!」は言わないお約束。

澄み切った湯
風呂上り、昼間の澄み切った青空と澄み切ったビールは格別。風呂上り、昼間の澄み切った青空と澄み切ったビールは格別。

太閤とて容赦せず
老若男女、神も仏も区別なく、隅と見れば出会い頭に切り落とす。

隅切り誕生前夜
研究室は長年の謎であった隅切りの産卵場所をついに突き止めた。

タダでは起き上がらん!
どうせなら稼いでやろうという商魂たくましき隅切られ。

きぃ~!もうヤケクソや!
ほら!これが欲しかったんやろ!全部持ってけ!この泥棒猫!

切られ隅供養
緑生い茂る神秘的な祠。こうして隅切りは土地の記憶となる。

動かざる証拠
かつてここに「隅」があった痕跡。トマソンで言う原爆タイプか。

盆栽見本市
玄関パターンと庭パターンの合わせ技、展示スペースですらある。

眼鏡人語

古い川柳に「狭むほど 味わい深き 小路かな」というものがある。いや、無い。嘘だ。さて、冒頭で説明を諦めた「隅切り」だが、私はこれを「車ぶつけたら嫌やから狭い道の曲がり角はちょっと土地空けといてね」という事だと理解している。そこは「お金出して買った土地やのに…」という悔しさもあるだろうが、それを補って余りあるメリットもあるのだ。当ても無く路地を進むワクワク感と、別の道に突き当たった時の狭いながらに突如視界が拡がる開放感。狭い→広い→狭い→広い→甘い→辛い→甘い→辛い→好き→嫌い→好き→嫌い…繰り返すほどにもうどちらを欲してるのか、快と不快が混然一体となり、気が付けば君はもう僕の虜、そうこれが心理学で言うところの「隅切り効果」である。まさに古い川柳にある「まちかどを 落として染めし 花小路」の場景そのものである。そう、もちろんそんな川柳は無い。これも嘘である。


【まちのメガネ】やましたゆうき 尼崎と東京を行き来する31歳。センベロよりも二千円で満腹まで辿りつくニセンベロマンが好き。