尼崎城への愛が強すぎて…城ラブおじさん
石垣にこだわる人 中川雄三さん城の声が聞こえる。石垣探し庄下川へ
城下町の面影を今に伝える寺町案内に大活躍の「尼崎ボランティア・ガイドの会」中川雄三さん。日頃から実際の城の遺跡がほとんどないことに、物足りなさを感じていた。ある日、ガイドネタを探して古地図を片手に橋の上を歩いていたところ、その日は庄下川の水位が低く、川底に一直線に並ぶ古い石が見えた。「もしや石垣では!?」。
後日、カヌーを漕ぎ出し、胴長靴を着込んで川へと潜入。その時の撮影写真を専門家に見せると、「まさに橋脚を固定する石」という鑑定結果が。さらに、中央図書館のある尼崎城趾公園に再現されている石垣にも、かつての城の石が使われている事実も発見した。巨石を切り出す時に打ちこむ矢の痕が残る「矢穴石(やあないし)」がいくつも発見できたのだという。過去に庄下川で見つかった石垣で、使い道がなく保管されていたものを再利用したらしいと知った。
今、城址公園のガイドでは、石垣の矢穴痕(やあなこん)を尼崎城の遺構として解説している。「当時の尼崎城に使われていたと言うとお客さんの反応も上々ですよ」と誇らしげだ。今回の天守閣復元の話題に「忠実な再現ではないので天守閣と名乗らず、尼崎城ミュージアムと名付けたらええんですよ」と意見は少し冷めているが、尼崎城への思いは熱い。
原寸大にこだわる人 正岡茂明さん原寸大の城を高校生と作りたい。布で
市制百周年を翌年に控えた秋晴れのある日、尼崎市役所に突如、巨大な城の絵が吊るされた。9階建ての庁舎に悠然と翻るは、縦18メートル×横16メートル、ペンキで描かれた原寸大の尼崎城の天守。
実はこの布絵、他にも市内の学校などに出現している神出鬼没の一夜城なのだ。城主(?)は正岡茂明さん。高校教員を定年退職後、働きながらまちづくり活動に燃えるエネルギッシュな城ラブおじさんだ。「尼崎に城があったことを伝えたい」という熱意を抑えきれず、なんと天守を(絵で)再現してしまった。布絵を吊るす度に屋上に登ってはロープで絵を括り付ける。風に揺れる雄姿を眺める笑顔はとても嬉しそう。
「城をテーマにみんなの力をあわせ、市制百周年、築城四百年を盛り上げたい」と、市民グループ「サロン・ド・サモン」の仲間と進めてきたこの企画。市内各地でかつての尼崎城をPRする。絵の制作は正岡さんの「若い世代にまちの歴史に興味を持って欲しい」との思いから、県立尼崎高校の美術部に依頼。生徒たちは春休みを返上し、ペンキまみれで描きあげた。
そんな世代を超えた情熱が呼んだミラクルなのか、尼崎城が再建されるという。城ラブおじさんと高校生たちは、どんなお城になるのか、胸をドキドキさせて待っている。
城ラブおじさんのこだわりポイント
何と言っても原寸大の迫力です。軽く丈夫な工事現場用のメッシュシートを20枚も使って築城しました。
実際の尼崎城で使われた歴史を物語る石が図書館の西側に積まれています。矢穴痕を見つけてくださいね。