フード風土 38軒目 ふじもと
よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。
おかず数々、定食の妙味
おかずとは、たくさん並べるから「御数」と言ったのが語源だそうで、すると、多種多様なめしの供がガラスケースという舞台で競演する惣菜屋や定食屋は、おかず本来の姿に出会える店ということになる。会いに行けるおかず。OKZ48…とは冷笑覚悟のオヤジギャグだが、「メイドイン尼崎総選挙」も盛り上がったことだし、ご容赦いただき…。
今回訪ねたのは、市役所近くの定食と惣菜の店「ふじもと」。阪神尼崎のアマセン内で長く営んだ惣菜店が3年半前に移転・衣替えした。この場所はもともと、惣菜の大きな調理場だったそうだ。
「祖父が昭和市場に開いた煮豆屋から始まって、一時は武庫川、南立花、難波の各市場、それにアマセンと立花ジョイタウンにも店があったんです。毎日60種類、一品につき5~10kgとか、大量に作って各店に配送してました」と、3代目の藤本尚紀さん(49)。
飲食店に重心を移した今も、和洋の定食各種、丼物に麺類、カレー、おでんと、目移りする品数の豊富さ。ガラスケースには旬の惣菜が毎日30種並び、持ち帰り弁当も充実している。
店に立つ奥さんの邦子さん(44)のお勧めでチキン南蛮定食を選ぶ。同行した若狭君は、ハンバーグ&エビフライのスペシャルランチ。「日替わりの炊き込みご飯もできますよ」との言葉に心が動くが、ここは白ご飯を大盛りで。
出てきた定食は見事だった。柔らかな鶏胸肉をカラッと揚げた衣で包み、自家製タルタルソースをふんだんにかけたチキン南蛮が主役、いわばセンター。脇には、やさしい春の味、菜の花のからし和え。やはり自家製ドレッシングの大根とキャベツのサラダ。シメジと椎茸のお吸い物。向かいのハンバーグには、ハート形の目玉焼きが載っている。
丁寧に仕込み、手をかけた一品一品の味わい深さはもちろんだが、盆の上に並ぶおかずたちのバランスとフォーメーションが見事なのである。だから、見た目から美味い。食べる前から嬉しい。
これぞ、日々数々の惣菜を作り、旬や彩りを見極めて「普通のおかず」を際立たせてきた藤本さんの手腕。おかず界の名プロデューサー、いや、名職人たる証しなのだろう。■松本創
38軒目 ふじもと
11:00~19:00(土曜~17:00)
日・祝休(貸切や仕出しは可)
TEL:06-6417-9069