選挙公報、ビラ、ポスターに見る「アマの声」と世相

尼崎市立地域研究史料館の保管する選挙公報やビラ、ハガキ、ポスターなどをリサーチ。アマの動きを追うため、市議会選挙(1993年以降)関連に絞った。写真提供/尼崎市立地域研究史料館

1993

「議会の大掃除を!」「不正議員は今すぐやめなさい!」威勢の良い見出しが飛び交ったのは1993年の市議会選挙。今なお尼崎市民のトラウマとして記憶に残るカラ出張問題で、議会が解散したのを受けて行われた「出直し選挙」である。中には「6・27(ろくにーなな)選挙で捨てよう カラ議員」といった具合に、不正に関わった議員を糾弾する“激辛川柳”を募集するビラも。反対に、当事者だった現職議員たちは、「もう一度チャンスをください」「辞職してお詫びをします」と平謝りである。

女性の候補者による手描きビラが多いのも特徴で、良くも悪くも市政への関心が一気に高まったことがわかる。ちなみに、この時に出馬し初当選した、後の尼崎市長・白井文さんのキャッチフレーズは、いみじくも「私は尼崎のイメージチェンジャー」であった。

1997 2001

ところがその後はトーンダウン。97年選挙では教育や福祉に力を入れると訴えるものがやや目立つくらいで、これといった傾向は見られなかった。

01年の選挙では、新世紀の到来を受けてか、「選び直せば変わります」「見直すとき」など、変化を促す見出しが増えてくる。「未来に夢を」「明日への希望」など、努めて明るいフレーズを使うのは、市政が停滞していたことの裏返しとも言えなくない。翌02年に白井新市長が誕生したのも、背景には変化を望む民意があった。

2009

では、前回09年はどうか。その前あたりから30~40代の若い男性候補が増え、こぞって若さを強調するように。「30歳」「尼崎歴33年」など、具体的に年齢を大書するのが流行りで、ついでに子どもや愛犬と一緒の写真を掲載するのも新しい傾向だ。選挙公報を見ると、本人を可愛らしいキャラクター化したイラストが頻出。自転車に乗ってクリーンイメージのアップにも抜かりがない。

このような候補者の“ゆるキャラ化”が示すものは何なのか。明確な争点がない中、政策や公約よりとにかく名前や顔を知ってもらうべく、まさにゆるキャラよろしく健気にアピールする他ない…ということなのかもしれない。

今年はこれで勝つ!南部再生おすすめ必勝スローガン

下町維新
「維新」は日本人なら誰もが心躍るマジックワード。「下町」に付くとなんとなく無理がある気もするが、中身よりも勢いが大事。

AMG24
自分を流行りのアイドルグループになぞらえて、尼崎を盛り上げる。「24」はもちろん「24時間、働きます」の意味。

80歳です!
若さでアピールできるなら、人生経験の厚みも武器になるはず。高齢化社会の今、選挙民のコアである高齢者層票を狙い撃ち!


取材・文:大迫 力