選挙支えるプロの仕事
選挙には独特の定説やルールがあったりして、候補者は不安でいっぱいになるもの。そこで登場するのがプロのお仕事。選挙を裏側から支える人たちに話を聞いた。
大島神社宮司 森本政典さん神さま、選挙がうまく行きますように。
選挙公示日に行われる選挙事務所開所式で、まず最初の仕事が御祈祷だ。「後援会の方が依頼に来られることが多いですね」と教えてくれたのは、大庄北にある大島神社の森本政典宮司(55)。地元候補者を中心に国会議員から市議会議員まで数々の選挙戦の口火を切ってきた。
御祈祷では、まずは選挙事務所を清め、神棚祓いを行う。その後に続くのが祝詞だ。その言葉は宮司自ら作文をするが、一体どんな内容なのだろう。「演説でスラスラと話せますように。人々に気受けよろしく、街への想いがうまく伝わりますように。選挙スタッフが無事に活動できますように。そんな文言を入れていますね」という森本宮司。立候補者の気持ちを汲み、無事に選挙戦を乗り切れるよう、願いを込める。
祝詞が響く選挙事務所には、厳粛な空気とほどよい緊張感が漂う。30分ほどの儀式だが、これからはじまる戦いに向けて、選挙陣営が神にむかって心を一つにすることの意味は大きい。
島谷写真館 島谷修さんとびきりの勝負顔逃しません。
「そもそも肖像写真は難しいんだけど、その中でも選挙ポスターは特にね。できればあまり撮りたくない」と、苦笑いするのは島谷修さん(82)。昭和40年からJR立花駅のすぐ近くに島谷写真館を営む。子どもは可愛く、家族写真は仲良く撮るのが基本なのだそうだが、さて選挙の場合は?
「年長者は、実行力、迫力を。若手なら、生き生きと、希望や目の輝き、などが感じられるよう…といった具合かな」。丸顔の人は逆光気味で顔に陰影を、頭髪が少々気になる人はトップライトを当てない、などの工夫も数知れず。
数年前に撮った若手新人の事はよく覚えているという。ずいぶん緊張していて、笑顔をなかなか引き出せない。「深呼吸して下さいって、息を吐いた瞬間をパチっと。やっと撮れた一枚でした」。これまで特定の候補者を応援したことはないが、「やっぱり自分が写した限りは当選してほしい。当選の知らせを聞くと、いつもほっとするんですよ」と、老カメラマンは優しく微笑んだ。
ウグイス嬢 平木場さゆりさん有権者の心に響くよう誠心誠意伝えます。
普段は、結婚式や展示会の司会、ラジオのDJなど幅広い分野で活躍する平木場さゆりさん。透き通るような声が印象的な女性だ。「ウグイス嬢のお仕事を初めてお受けしたのは、10年前。当時は、何の知識もなく現場に放り込まれたので(笑)、先輩の仕事を見て必死に覚えました」。
ウグイス嬢といえば、選挙カーに乗り、笑顔で手をふりながら、候補者の名前を連呼するイメージ。実際のところ、マニュアルなどはあるのだろうか?
「手を振る時は、指を揃える。(指が離れていると、そこから票が漏れると言われている)対立候補の事務所や病院などの前では音を控えるなど、気をつけることは色々あります。ただ、選挙の戦い方は候補者によって違うので、ウグイス嬢に対する要望も様々。そのニーズに応え、的確に動くことが大事ですね」と、平木場さん。つまり候補者の数だけ、ウグイス嬢の仕事も千差万別ということ。実に奥が深い仕事なのだ。