サイハッケン 電車男が泣いて喜ぶ車両があった。

長く住んでいても意外と知らないまちの愉しみ。「へえ~」と目からウロコの再発見!
ディープサウスの魅力をご堪能ください。

金魚鉢を一目見ようと、尼崎へやってくる鉄道ファンは絶えない。もちろん、ファンじゃなくても必見のお宝車両。「よくぞ尼崎に残っていてくれた」と感動の対面をお楽しみください。

「尼崎にあんな素晴らしいものがあるのを、ご存知ないんですか」と興奮気味のこの男性。はるばる東京から、尼崎にやって来てまで見たいものがあったのだ。

愛らしい大きな窓と流線型のスマートなデザインで、「鉄道史に残る名車」と彼が絶賛するのは、阪神国道線71形、通称「金魚鉢」。昭和2年から昭和50年までの48年間、国道2号線を走っていた路面電車の車両だ。ゴトゴト、ゴトゴト。大阪野田から東神戸までの約26キロを、たくさんの人を乗せ走っていた。

長年、市民の足として活躍してきたが、車の通行量が増え、昭和50年に惜しまれつつも廃線。しかし、車両はその後も街の貴重な財産として尼崎市によって保存展示されることとなり、水明公園と蓬川公園の2カ所へ移設された。

ボディを塗り替え、車内には畳を敷くなどのリフォームを経て、地域の会合や子ども会の活動の場として生まれ変わった。

「本当はリフォームせずに、当時の状態で残しておいてほしかったんですけど…」と少し遠慮しながらも、お宝車両「金魚鉢」の魅力について語ること2時間。

「市もお金がなくて大変でしょうが、何とか保存を続けて欲しい。71形の姿が拝めるのは、全国でも尼崎だけなんですから」。そう言い残して「電車男」は東京へと帰っていった。


水明公園


小森利絵●こもりりえ
1982年生まれ、尼崎在住。フリーペーパー「れもんのき」発行人。