叫べ!まちの市場たち ICHIBA CALLING 第4回 三和市場

ドンブリ片手に市場を味わう。 大学生と商店主たちのいい関係

かつて「阪神間の台所」と呼ばれた三和市場。わずか300mほどの通路を通るのに、1時間かかったというほどの混雑ぶりを誇った市場も、今はゆうゆうと自転車が走るほどに寂しくなった。

にぎわいを取り戻すカギ。それは「丼」。関西学院大学の学生と三和市場の店主が共同で企画した、この一見唐突なイベントが「オレ流丼食堂」だ。何を隠そう、私もスタッフの一人である。

参加者はまず丼鉢に盛った白飯を100円で購入。それを手に市場内を散策、ステーキや海鮮、天ぷらなど100円から400円の具材を各店舗で購入し、自分で自由に丼に盛り付けて空き店舗の前に用意されたテーブルで食べるという趣向。「台所」なんだから、その場で食事ができてもいい。そんな学生たちの素朴な発想から生まれた企画だ。

空き店舗前が食堂に
具材に迷うオリジナル天丼
お小遣いで食べられる良心価格
学生スタッフが市場をガイドする

「そんなん無理や」。市場の事業部長を務める肉屋の森谷寿さんは最初に学生の話を聞いたとき、こう思ったという。最近のお客さんは特に衛生面に気を遣う。覆いもしていない丼を持って歩くなんて…。しかし、学生たちも譲らない。「市場を歩いてもらうのが狙い。レストランのように、座っているお客さんに料理を出すのでは意味がないんです」。

熱弁に店主らも動かされ、「とりあえずやってみよか」と04年11月に第1回を開催。不安そうだった店主たちの顔つきが次第に笑顔になっていく。丼鉢を持って市場を駆け回る子どもたち、普段は決して市場に足を踏み入れない制服姿のOL、さらには尼崎市長まで! トロ満載のぜいたく海鮮丼を作ったり、丼3杯食べる猛者も現れ、2日間で100食を完売した。

好評だった第1回に引き続き、昨年12月には2回目を開催。かつて対面販売や新鮮な食材をウリに栄えた市場が、再び自分たちの魅力をアピールするきっかけをつかんだ。

「三和に丼あり!と言われるようになりたいなあ」。語り合う店主と学生、親子ほど歳は離れているが、そこには友情のようなものが芽生え始めた。三和市場の皆さん、私らの結婚式の時には友人代表のスピーチ頼みますね。あ、料理は丼でどうですか(笑)


三和市場


ほうじょう みよ
1985年生まれ。大阪府茨木市で太陽の塔を眺めながら育った大学生