第6回新人お笑い尼崎大賞エントリーの地元コンビ
たしかな演技力。ガツガツしない大本命 百萬両ジェントルマン
県立尼崎高校演劇部出身の同級生コンビ。小劇団を主宰し、「関西演劇界ではちょっと有名」な片岡百萬両さん(27、写真右)、大学で演劇を学び、歌手もやる西谷修一さん(26)は生粋の舞台人体質を前面に、コントで勝負。たしかな演技力とドタバタ喜劇のようなネタ、コテコテのアマ育ちなのに関西弁を使わない芸風で異彩を放つ。
結成は昨年の予選1週間前。「ひとつブームに乗ってみようか、と(笑)演劇でもどっちにしろ、『お笑い担当』ですから」。ネタ作りは銭湯で2人、風呂上がりのビールを飲みながら。いちおう「コンビでお笑いの世界を目指そう」と話し合ってはいるものの、「来年には単身東京に行ってタレントに」と西谷さんがいえば、片岡さんは「芝居の方の具合をみながらですね」。気合が入っているのか、いないのか。「ガツガツしない」のが身上ながら「今回にかける秘策はあります」とにやり。
進学校に通う二人。目指す進路はNSC ノンスタンダード
「とにかくしゃべり好き。口から生まれてきました」という前川拓也さん(16、写真右)。昨年の予選エントリー後にコンビ別れして困っていたところ、友人に紹介されたのが「小学生のころから『お笑い』になりたかった」という辻拓史さん(17)。本番1週間前に結成、3日前からぐっと追い込み、その勢いのまま最年少の本選出場まで突っ走った。
「狙ったところでどかんどかん笑いが取れた。あの気持ちよさをもう一度」と、大小のコンクールやオーディションを受けまくる日々。ツッコミの前川さんが「学校のノートよりびっしり書いている」というネタ帳の中身は、「彼女が欲しい」「体育大会」「授業中おもろかったこと」など高校生コンビならでは。
大学受験にまい進する周囲に背を向け、「進学先」は吉本興業のNSCと決めている。「学校では極力存在を消して友達と触れ合わない(笑)」という辻さんのボケが今回も弾けるか。
いつかは地元で… コテコテ下町の笑いを 白忍者
「出来は上々でした」。阪神杭瀬駅前の公園で会った「白忍者」の2人が顔をほころばせた。若手芸人が出演する吉本興業の劇場で月に1回行われているオーディションを、たった今受けてきたという。へえ、じゃ来月から劇場に? 「いやいや。出演者の中にも、いうたら1軍から3軍まであって、僕らはまだその下の補欠ですから」
家も職場も杭瀬の豊村充容さん(28、写真左)と生粋の京都人、小倉泰典さん(26)は2年半前、NSC(吉本芸能総合学院)で出会った。「こいつが『組んでくれ』ってストーカーみたいに毎日電話してくるから(笑)」という豊村さんに、「なんでやねん」と小倉さん。会話にも自然と舞台上の役割が出る。
いや、会話だけじゃなく見た目にも。身長156センチしかない豊村さんは持って生まれた「老け顔」。それをネタにボケまくり、「おじいさんやないか」と、長身の小倉さんに突っ込まれる。その対比は、コテコテ下町の尼崎とはんなり優雅な京都を表しているようでもあり、実際にそこから着想したネタもある。
ネタは豊村さんが書く。最初はコントだったが、2年かかって結局、オーソドックスなしゃべくりに行き着いた。「ネタも大事やけど、それ以上に、面白い人はやっぱりしゃべりが上手いんです。NSCの先生に『お前らのネタでも一流の芸人がやったら爆笑取れる。その逆は無理や』と言われました。その意味が分かってきた」
NSCには800人近い同期がいた。が、いまも芸人を目指すのは100人。NSCを出たといっても「芸人志望の素人」に過ぎず、人前に立つ機会は自分で探さねばならない。商店街のイベントや地域の祭り、芸人仲間が企画したライヴ。ギャラはなしに等しい。2人は、三田にある養護学校の文化祭にも毎年出演する。小中学校時代、ひどいぜん息だった豊村さんが長期療養しながら通った母校だ。
「病気と闘ってる子たちが、僕らの漫才をすごい楽しみに見てくれる。先生から『君らを見て漫才やりたいっていう子がおったで』と聞いて、うれしくて。有名になりたいとかモテたいと思ってこの道に入ったわけですけど、ちょっと変わりましたね。一生懸命漫才を見て、喜んでくれる人の前で続けていければ幸せやなあって」
いつか地元の杭瀬で定期的に漫才を見てもらえる場を作りたい、と豊村さんはいう。もちろん売れたい。でももうひとつの目標、息の長い漫才師になるための、新人お笑い尼崎大賞はステップだ。