よみがえれ!ボクらの公共(パブリック)建築

あまり意識することはないけれど、街の風景にそっとたたずむ公共建築たち。お世話になった小学校と、お世話になっちゃいけない警察署が今静かに復活の日を待つ。

威厳と風格を漂わせる白亜の尼崎警察署 地下の取調室で遊びたい!カツ丼頼んでもいいですか?

留置所の壁に残る落書きたち。手書きカレンダーが生々しい。

北城内は、かつての尼崎の官庁街。当時の面影を唯一残す建物は、真っ白で、ちょっとエラそうな外観をしていた。

地上2階、地下1階。入り口の装飾、階段部分や天井のアーチなどはセセッション様式と呼ばれる趣きある意匠がほどこされている。

旧尼崎警察署は大正15年築、この街の安全を守ってきた。その後昭和45年、昭和通の中央署完成後は、土地建物が尼崎市に移管され、城内出張所と城内児童館として転用。しかし、阪神大震災によりすべての利用が中止に。以来10年間で、尼崎警察署は確実に廃墟化が進んできた。

階段手すりのゴージャスな装飾

窓と扉は板で打ち付けられ、壁ははがれかかった姿を見るたびに「うゎ~もったいなぁ」と思っていたのは筆者だけじゃないはず。

尼崎市民まちづくり研究会のメンバーが3年前からエントランス脇の花づくりに汗を流してきた。

この姿に共感したのか、尼崎市もこの建物活用の検討をはじめた。官民一体となった警察署プロジェクトが動こうとしている。「活用方法は未定ですが、遊び心のある使い方を市民と一緒に考えたいです」と尼崎市都市政策課立石係長はいう。

警察署時代からほとんど手を入れていない地下フロア。普段はお目にかかれない、いや、かかりたくはない拘置所や取調室は35年前のまま残されている。この非日常の空間でお茶したり、カツ丼の出前取ったりしてみたいものである。■WK

数万人の尼っ子を育んだ開明小学校 学び舎を使い倒せ 統廃合その後…

円筒形の階段室が特徴的

阪神尼崎駅に近い旧開明小学校は創立130周年を区切りに昨年春、隣の旧城内小と統合。「明城小」として、旧城内小の敷地で再出発した。旧開明小校舎はどうなるの?今も卒業生が多く住む地域から声が上がった。

「児童も減っていたので、いずれその時が来るやろうと、育友会を中心に数年前から統廃合を考える会が動いてたんです。で、いざ統合となった時に、まず校舎の保存という地域の要望をまとめることができた」。同小OBで元育友会会長の松浦真蔵さん(56)がいう。「統合は残念やけど、決まった以上は第1号、尼崎のモデルケースにしたいという思いやったね」

旧校舎は昭和12年築。淡いピンクの円柱がそびえる時計塔、古びた板張りの階段、半円形に張り出したガラス張りの階段室。校門脇の壁には戦時中の機銃掃射の跡が残る。

戦争遺産、機銃掃射跡の壁は保存される

「親子3代で通った人もいる学校。味のある建物ですよ。でもね、ノスタルジーだけやないんです。住民が便利に快適に使えて初めて残す意味があるんやないかなあ」

近く補修工事に入る校舎には、市役所の支所や保健所の一部機能が入ることが決まった。校長室に歴代の卒業アルバムを並べたり、廊下を市民ギャラリーにする計画もある。校庭は来春から公園に。住民の意見で「癒しの庭」や旧開明小のモニュメントコーナーも造られる。■MJ

全国廃校事情

♪赤い夕陽が校舎を染めて、と歌われた昔から、老若男女の甘酸っぱい思い出が染み付いた「学び舎」。統廃合後の校舎を保存し、まちのために使おうという動きは全国に広がっている。

廃校リニューアル50選」というサイトをのぞくと、図書館や体験学習施設といった「なるほど学校っぽい」ものから、医院や道の駅、町営住宅に生まれ変わったところまで、全国の事例が紹介されている。洋菓子などの神戸ブランドが集まる「北野工房のまち」やカフェやアトリエを備えた「京都市芸術センター」は有名だ。

尼崎市内の小中学校では来春以降、6つの統合計画が上がっている。跡地利用については「売却が基本」と市はいうが…