工場好きのアナタへ テクノスケープ講座

「ワタシ、なぜかドキドキしちゃうんです。工場を見ると…」なんていう愛好家のみなさま、必読です。[テクノスケープ]という新たな景観論を提唱する若き研究者、岡田昌彰先生に、得体の知れない胸のドキドキ感を説明してもらいました。

Q:テクノスケープって何ですか?

工場の煙突や建物、クレーン、高速道路、ガスタンクなどが作る工業景観は、実質的な機能だけを追求して作られたもの。にもかかわらず、時としてその形やデザインから、芸術性を感じ取ることができます。設計者の意図とは別に、見るものを魅了してしまっている。景観の価値は、作り手ではなく「見る人がその価値を決める」という考え方を研究しています。

Q:工業地帯の景色にドキドキするのはなぜ?

ありし日の関西電力尼崎発電所の煙突

原因は大きく2つ考えられます。一つは、あなたが工場のある風景に囲まれて育った、つまり原風景としての懐かしさを感じている。もう一つは、これまで全く工場景観に触れて来なかったため、未知の景色と遭遇したワクワク感じゃないでしょうか。ちなみに自分の場合は前者。オトナになって[日立大煙突]倒壊のニュースを知ったときには、この上ない喪失感を感じざるを得なかったです。

Q:どうすれば楽しめますか?

まずは実際に工業地帯へ足へ運んでください。そして、何も考えずに360度非日常の景色に囲まれていると、まるで荒野を探検しているような気持ちになれます。個人的には、あまり理屈っぽく説明するよりも、まずは探検気分でテクノスケープ狩りに出かける方が楽しい。自分も考え事をする時には、今でも尼崎や岸和田の工業地帯へ行ってしまうほどです。

南部再生編集部おすすめ 例えば、こんな味わい方も…

合体ロボット好きのアナタは…メカの動きを想像して楽しむ

丸いのが振り子の原理で、クレーンを引き上げて…なんて、メカニックな分析をどうぞ。究極は操縦席に乗る自分の姿を想像すること。

空想家で夢見がちなアナタは…勝手に意味を考えてみる

あ~、屋根にキノコがはえてる~!なんて軽~い気分でキッチュな景観を楽しんでください。ガントリークレーンが本当にキリンに見えてきたら、工場地帯探訪の達人です。

リフレッシュしたいアナタは…心を無にして向かい合う

仕事のストレスも恋愛のごたごたも、パイプのあまりにもプリミティブな形が忘れさせてくれる。この「奇妙な単純さ」はとにかく語る前に見てください。


岡田昌彰(おかだまさあき)

1967年茨城県日立市生まれ。[日立大煙突]を原風景に育つ。近畿大学理工学部社会環境工学科講師。著書「テクノスケープ~同化と異化の景観論」は、氏の工場景観に対する沸き立つ情熱と研究者としての冷静さがぶつかりあう名著。