尼崎コレクションvol.08《明治十年内国勧業博覧会列品写真帖》

尼崎市内に現存している逸品を専門家が徹底解説。あまりお目にかかれない貴重なお宝が歴史を物語る。

日本初の美術館、の写真

[作品のみどころ] 尼崎市教育委員会所蔵の『明治十年内国勧業博覧会列品写真帖』に収録された写真の1枚です。美術館内の写真も収録されており、工芸品を展示したガラスケースの傍らに監視員が座っている、今の美術館の展示室とあまり変わらない様子が写されています。

1877年(明治10)、東京の上野公園で日本初の全国規模の博覧会である「第一回内国勧業博覧会」が開催されました。この博覧会の中心となった展示館は煉瓦造りの建物で、その名を「美術館」と称しました。これが日本で初めて建設された美術館でした。

この「日本初の美術館」は、博覧会終了後、東京帝室博物館(現在の東京国立博物館)の展示館のひとつとして長く使用されていましたが、1923年(大正12)の関東大震災で被災したため現存していません。

で、ここまでの話が一体「尼崎コレクション」と何の関係があるのかと思われたでしょうが、実はこの「日本初の美術館」の外観がはっきりとわかる写真は、尼崎市教育委員会が所蔵しているこの1枚だけなのです。

この「日本初の美術館」の外観を写した写真は、他にも宮内庁書陵部や東京国立博物館が所蔵していますが、保存状態が悪かったり遠くからの撮影であったりして、この写真のように外観ははっきりわかりません。ですので、日本近代美術史に関する事典や書籍、図録等で「日本初の美術館」を写真入りで紹介している場合は、必ずこの写真が使われていますし、これまでに東京国立博物館や兵庫県立美術館、東京都写真美術館、大阪市立博物館、京都工芸繊維大学美術工芸資料館などの特別展にも出展されてきました。

もちろん、尼崎市内で開催した尼崎市教育委員会主催の展示会でもこれまでに何度も展示していますので、実際にご覧になられた方も多いと思います。まさに全国で尼崎にしかない、尼崎が全国に自慢することができる「お宝」のひとつと言えるでしょう。

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桃谷 和則(ももたに かずのり)
尼崎市教育委員会学芸員 最近、自転車をこぐスピードが遅くなりました。衰えかなあ…