奄美と尼 つなぐ旅行社
大島紬や宝飾品を扱う「奄美商店」を東園田町で営んでいた久保秀基さん(写真左)は、お客さんと一緒に奄美観光ツアーを独自に企画してきた。親戚が営む大島紬の製造現場で泥染め体験をするなど、多い時には1年間に500人近い人たちを案内。尼崎と奄美をつなぐこうした取り組みは地元紙でも紹介され、ついに奄美の旅行代理店から声がかかった。「大阪営業所をやってくれないか」。こうして2006年、JR尼崎駅の北側に「奄美エーストラベル大阪営業所」を開設した。
名瀬出身の久保さんは進学のために、1965年に関西へ。大学卒業後、数回の転職を経て奄美商店を開いた。「仕事が忙しくても奄美のことならつい引き受けてしまう」という性格で郷友会の世話役にも走り回ってきた。徳之島への基地移設騒動については「離れて暮らす私が言うべきではないけど、全国から注目された今こそ、基地に頼らず地場産業での自立を考える絶好のチャンス。私も奄美をもっとアピールしたい」と前向きにとらえる。
奄美では「サンガツサンチ(旧暦の三月三日)」と呼ばれる日は、潮が引いてサンゴ礁の上を歩けるのだとか。4月中旬のこの日は海開きでもあり、「奄美でしかできない体験だよ」と目を輝かせる久保さん。アマとシマをつなぐ仕事はきっと天職なのだろう。