南部再生第13号:もくじ
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論:地元尼崎と郵便局

看板だけで信頼される。そんな時代はもう終わりました。

 昨年4月に、日本郵政公社として新たなスタートを切った郵便局は日本全国に約2万4千、尼崎市内には57局あります。私が勤務する尼崎神田郵便局は、尼崎の商業の中心である中央三和出屋敷商店街の中ほどにあります。普段から商売人の方々やお客様との会話を窓口などで聞くことも多く、商店街や市場の移り変わりを私なりに感じてきました。

 昔をよく知る方は、まず年末の活気の違いをよく話題にされます。地元で生まれた私も、大晦日にはNHKの紅白歌合戦を見ながら年明け近くまで営業されていたお店のことを思い出します。普段でも夜8時くらいまではほとんどのお店が開いていたのではないでしょうか。時代の移り変わり、消費形態の変化もあるのでしょうか、早々と閉まってしまう今の商店街に何とも寂しさを感じてしまいます。

職住近接から生まれる地元への愛着感

 郵便局でも時代の流れと共に変化せざるを得ない問題が生まれてきています。20年ほど前は、ほとんどの郵便局長の住まいが局舎に併設か近くにあり、同じように近隣に住む職員も比較的多かったのです。ところが昨今では、市外から通勤してくる局長が多くなっています。生活環境の問題か、他に理由があるのでしょうか。

 このことは地元に対する愛着の強さにも影響し、ややもするとサラリーマン化した状態でその地域とお付き合いをしていくことになります。愛着があるかないかというギャップを埋めるには並大抵以上の努力が必要になり、またそれが責務であると私は思っています。「街」は、「昼」「夜」「休みの日」でいろんな顔(表情)を持っています。ある一面だけを見てその地域を理解できるでしょうか。

看板に負けない地域密着のサービス

尼崎市ちかまつ・文化担当と共同で、平成12年に市内55局全局の風景日附印を制作。局ごとで図柄が異なる

 公的金融機関である「郵便局」はその看板だけでお客様から信頼していただける恵まれた条件にあります。しかし、本当に地域に愛されて信頼をいただくためには、立場上与えられたものではなく、一人の住民としてその地域にとけ込み、生活を共有していくことが信頼の基盤になりうるであろうと思います。そしてその上に、郵便局であるからこそできるサービスが提供できれば、本当の意味での地域に根ざした存在として、これからもお役にたつことが出来ると思います。

たわいのない会話が行き交う集会所

 郵便局は物流の拠点や公的金融機関だけでなく、本来の役割として地域の情報発信源であり、集会所的な存在であってもよいのではと思います。「きょうはいい天気ですね」「ほんとですね」という会話のできる郵便局こそが地域に必要とされるのではと考えます。お店がチェーン店化していっているように、郵便局が民営化されてしまったら、私の考える「郵便局」は存在しなくなるように思います。

地元という劇場で演技する役者の気持ち

 先日、中央三和出屋敷商業地区まちづくり協議会を中心に尼崎ならではの商品を販売するイベント「メイドインアマガサキショップ」に参加し、商品の発送を引き受けることになりました。地元のイベントへの参加は、ある意味、劇場で演技する役者の気分でもあり、この気持ちをほかの郵便局長にも感じてもらうため、エリア内局長へ協力を要請しました。たった一日でしたが、商店主の方々やお客様とふれあい、いろんな再発見をした思いです。この事業で選定された商品を育てていくことは郵便局の仕事のような気がしています。地元でしか販売していない、「メイドインアマガサキ」郵便局バージョンの誕生につながるよう思考を繰り返して行こうと考えています。

かしま ひろみ ● 1954年尼崎市生まれ。関西大学電気工学科卒業後、(株)神戸屋に入社。各地の生産の現場と営業店を見つめてきた。1988年、家業の尼崎神田郵便局長に就任。