百年まであと一年白寿な会社

カワタ工業株式会社
1916年(大正5年)創業以来、醸造工業にかかわってきた同社では、3代続けてその技術を発展させ日本で唯一の無菌培養できる自動製麹装置を開発している。
東本町3-1 ホームページ

99年前の東本町。大物川沿いに蔵が立ち並び、醤油の香りがただよう地域でカワタ工業は創業した。東本町から大物にかけては、江戸時代から続く醤油の産地で、伊丹の酒造りの技術が尼崎へと広がり、国外にも輸出するほどの製造量を誇ったのは有名な話。当時三共化学合名会社として、醤油の原料となる甘草の甘味を抽出する技術で尼の醤油産業を支えた。

「祖父から父親、そして私で3代目になります。綿々と続いてしまった」と笑うのは社長の川田洋一さん(65)。99年の歴史といっても「世の中の変化に苦しみながらも何とか続いてきた」という同社のテーマは今も「醸造」だ。

父で2代目の正夫さんは、戦前に大阪大学で醸造学を学んだ学者肌で、昭和28年に日本初の製麹(きく)装置を開発した。「『マッサン』のモデルになった竹鶴先輩からも醸造技術を教えてもらったと言っていました」と洋一さん。そんな父の夢は「無菌培養」できる機械の開発。味噌、醤油作りでは防腐のために塩を使うが、無菌培養が可能になれば塩分を抑えることができる。この機械を完成させたのが松下電器のエンジニアを辞して、3代目に就任した洋一さんだ。

「うちみたいな小さな会社はニッチな分野で戦うしかない。カビや醸造を切り口に常に新しいことを考えないといけないんです」と4代目の息子さんとともに来年会社は100年を迎える。

まちで見つけた99

血眼になって99を探していた取材班はこんな奇跡のようなナンバープレートの一台にも遭遇できたのだった。