9×9の宇宙 尼崎将棋界事情

9×9、81マスの盤上で駒を戦わせる将棋の世界。尼崎では武庫川河川敷や近松公園といった青空将棋場がさかんだが、「尼崎将棋普及実行委員会」なる団体が今から5年前に誕生していた。

子どもたちには将棋のルールだけでなく礼儀作法もきちんと教えるという藤内さん。「負けたときに「負けました」ときちんと声に出して認めるのは悔しいみたいですけどね」。

春と秋に「こども将棋団体戦」、11月には個人戦の三世代交流大会「近松賞」を主催する団体は、指導棋士の藤内忍さんを中心に市内各地で将棋教室を開く。大庄川田町で生まれ育った藤内さんは、小学生の頃に将棋を始め、大阪市福島区の「将棋会館」に通いプロ棋士を目指した。残念ながら、トーナメントプロへの夢は閉ざされたが「将棋が楽しくてしょうがなかった頃の気持ちを伝えたくて」と小学生たちに将棋を教えている。

現在は尼崎出身のプロ棋士はいないが、「いつか尼崎出身のプロ棋士が生まれるような環境を作りたい」という藤内さんの想いに、地元財界も支援。さらに文化庁からの伝統文化親子教室事業の補助金などで親子入門教室や学校の放課後学習で将棋を指導している。

「9×9の宇宙なんて言われるのは、取った駒をさらに置くことができる日本将棋だからでしょうか。星の数ほどある選択肢から指し手を選ぶゲームは奥が深いですよ」と熱く語ってくれた。

巨人の背番号99が尼崎出身だった。

プロ野球選手として読売ジャイアンツの「99」を背負った尼崎出身の男がいる。選手の名は「出口雄大」。神戸弘陵高校で甲子園に出場、卒業後ドラフト外で巨人に入団、翌年背番号を「66」に変更し1995年には一軍デビューを果たした。残念ながら98年には戦力外通告を受けるが、福岡ダイエーホークスの入団テストに挑戦し見事合格した不屈の男も2005年に引退している。

クックと鳴くすごい鳥 これが鳩レースの世界だ。

近畿大会の1000キロコースで、北海道からトップで帰還し優勝したエース鳩(7才・メス)。Kさん曰く「いい鳩は手で持つとしっとりしていて大人しい」のだとか。

クック、クルック」と鳴き声が聞こえる2階建ての立派な鳩舎がある。「南武庫之荘の鳩小屋」と言えば近所の人ならピンとくるちょっとした有名建築だ。それもそのはず。実はこの鳩舎、周辺が田んぼばかりだった50年近く前からあるという。「全国ナンバー1に輝いた鳩もいるんですよ」と2代目オーナーのKさん。以前から交友のあった初代オーナーより1年前、優秀なレース鳩とともに鳩舎を引き継いだ。

鍛え上げられた鳩は、まずスタート地点までトラックで運ばれる。短距離でも100キロ、遠くはなんと1000キロ離れた北海道余市がスタート地点になるのだとか。そこで早朝に放たれた鳩たちがそれぞれ自分の鳩舎に帰ってくるまでのタイムを競う。小屋の場所によって微妙に距離が異なるため、分速の記録で順位を決める。

春と秋はレースが目白押しで、シーズン中は、ほぼ毎週、距離別の大会が開催されている。レースは鳩の帰巣本能を利用して行うもの。鳩は巣の方向を太陽の位置や地磁気を感知しているとも言われるが未だ謎も多い。

2階建ての鳩舎、現在隣りに新鳩舎を建設中。

気になるのは鳩のスピード。トップクラスだと時速90キロ。北海道から尼崎までなんとわずか1日で帰還する驚異の速さだ。

Kさんは毎日朝早くから200羽が暮らす鳩舎を丁寧に掃除し、栄養のある餌を与え、放鳥訓練でリフレッシュさせながら鳩たちに愛情を注ぐ。そんな日々の積み重ねが「速く尼崎に帰りたい」と鳩たちの帰巣本能に火をつけるのだった。