続・ツクラナイマチヅクリ でっかい屋外プールが欲しい

作ってみるとわかるはず。施設を作らないまちづくりの大切さが。
試算と文・齊藤成人

新人:あ~あ。夏が終わって、屋外プールの営業もすっかり終了しちゃいましたね。

社長:なんや、屋内プールでええやろ。

新人:プールはやっぱり屋外ですよ。大阪じゃ道頓堀をプールにするって景気の良さげな話もあるし。市内には屋外プールは、芦原公園、北雁替公園、尼崎スポーツの森の3カ所あるけど、全然足りないっすよ。誰かもっとつくってくれないかなぁ。

社長:相変わらず何にも知らんのう。そもそも昔は市内に7カ所の市民プールがあったんや。でも、昭和53年のピーク時から利用客が4分の1まで減ってしもうて、利用者数が1番目と2番目の芦原公園と北雁替公園の2カ所を除いて残りは平成19年に閉鎖してもうたんや。

新人:残しておいてくれれば良かったのに。

社長:あのなぁ。そもそもプールって運営コストが高いんや。少なくとも人件費や水道光熱費やなんかで年間2千万円以上はかかってまう。残ってる芦原公園も北雁替公園も夏季しか営業してへんのに大きく赤字や。誰がその金負担すんねん。

新人:なぜ赤字になるんですか?

社長:小学生が小学校プールを利用してまうから利用客がそもそも少ない。特に、夏季しか営業できへん屋外プールは稼げる期間が短くて、かかった設備投資分まで回収するのはまず困難や。それに「水」物は駆体への負荷が重く老朽化や漏水なんかで、メンテナンス費用が普通の施設よりも倍かかるんや。

新人:へ~。

社長:うちのアニキが銀行員やったけど、新人研修で「水」物への融資は気をつけぇ~と教わったそうや。水商売と水を使った施設っちゅーことやな。

新人:でもプールつくるのって安いんじゃないですか?アメリカには個人の家にあるくらいだし。

社長:吹きっ晒しの25mプールでよければ1億円以内ですむやろ。ただ、プールサイド(1.5億円)や管理棟(4億円)なんかを付けていくと、平均7億円以上ってことになるで。土地代除いてこれや。

新人:対して収入は?

社長:『レジャー白書』によれば、プール1回当たりにかける費用は約900円や。屋外プールとすれば、営業日数は夏の間だけということと雨の日を勘案すればせいぜい45日。一般的な25mプールの1日平均利用者は平均300人や。計算すると、1日の平均売上は27万円で、これに営業日数をかけると年間1千2百万円の売上しかあらへん。いっとくけど、ピークのシーガイアオーシャンドームで1日平均利用者数は平均3500人、絶好調のスパリゾートハワイアンズで4500人くらいの集客やで。300人毎日集めるのはほんまにしんどいで。つまり、屋外プール事業は施設に比べて売上が絶対的に足らんっちゅーことやな。

新人:みんなプールに行かないでどこに行っているんですかね?

社長:アホゥ。尼にはセンタープールっちゅう立派な屋外プールがあるやんけ。大人やったら、あっちのプールのほうを選ぶわ。


さいとうなるひと
日本政策投資銀行勤務。「アマラーゴ」大好き。尼崎でつくってみたい事業を募集中!!