尼崎コレクションvol.15《大物遺跡出土の『経石』(だいもついせきのきょうせき)》

尼崎市内に現存している逸品を専門家が徹底解説。あまりお目にかかれない貴重なお宝が歴史を物語る。

大河ドラマに出演した石

作品のみどころ
平成24年10月7日放映のNHK大河ドラマ『平清盛』は、清盛が石に経文を書いて舟にのせ沈め築いた「経ヶ島」のお話しでしたが、その後の~清盛紀行~では、神戸の大輪田泊を紹介。そこになんと尼崎市教育委員会所蔵の経石がアップで放映されました。

大物は、平安時代末期以降、神崎川河口に発達した港町で、当時の記録類にしばしば登場するほか、謡曲「船弁慶」の舞台として、広く知られていましたが、長らくその所在を具体的に明らかにすることはできませんでした。平成7年大物町2丁目の市営住宅建替えに先立つ発掘調査によって大物遺跡が発見され、はじめて港町大物の一端が明らかになりました。

写真の経文を墨書した経石は、この大物遺跡から見つかったもので、総数983点(うち判読できたものは392点)を数え、幅4m×長さ7mの範囲に重なるようにして鎌倉時代の土器などとともに出土しました。5×7cm程度の偏平な自然石が大部分ですが、大小の不整形な石もあります。経文は石の表裏両面の他、左右の側面・上下面にわたり流麗な楷書でびっしりと書かれています。経典の種類は「無量義経」「妙法蓮華経」「仏説観普賢菩薩経」のいわゆる法華三部経です。

12世紀頃の経石がこれほどまとまって出土した例は全国的になく、清盛が大輪田泊を修築する際、石に経文を書き写して沈めた「経ヶ島」が所在した神戸市兵庫区では見つかっていません。大変興味深い資料といえます。

一昨年、NHKの大河ドラマが『平清盛』と決まった時から、大物遺跡出土の経石には全国各地からオファーが。今年1月には、大河ドラマ関連番組『歴史秘話ヒストリア 平清盛』に取り上げられ、『2012年NHK大河ドラマ50年特別展 平清盛』に出品され全国各地を巡回しました(江戸東京博物館→神戸市立博物館→広島県立美術館→京都文化博物館)。他に兵庫県立考古博物館、神戸市立埋蔵文化財センター、たつの市室津海駅館で開催された展示会にも出品されましたし、もちろん、尼信博物館で行われた尼崎市教育委員会所蔵資料展『清盛の時代の尼崎展』にも出品しました。

実物を展示中 文化財収蔵庫

収蔵庫の開館は月~金の9:00~17:30。入館無料・予約不要
●南城内10-2 TEL:06-6489-9801


山上真子(やまがみまさこ)
尼崎市教育委員会学芸員 経石まだご覧になってない方、文化財収蔵庫ではいつでも見ることができますよ。