尼的観光地図(マップ) 第9回【杭瀬寺島界隈】
尼崎南部を旅人気分で歩いてみた。
泥棒も迷うほどうねる路地裏はかつての水路の面影
杭瀬といえば、杭瀬団地、五色横丁、第一敷島銭湯、いちふく玩具店…と『南部再生』ではお馴染みの名所に富んだ町である。
観光客気分を無理やり奮い立たせて尼崎を散策する本企画だが、鮮魚や青果を威勢よく売りさばく杭瀬中市場や、玄関先で座り込み何やら工作に没頭するご主人、すれ違うだけで話しかけてくる老婆など、町全体が脈打つような活気に溢れる杭瀬は、下手なレトロテーマパークより見どころが多い。
商店街を抜け、神崎川方面にある杭瀬寺町まで歩いてみると、道がゆるやかにカーブしながら複雑に交差する住宅街に行き着く。「この辺りは泥棒でも道に迷う」と町の人が語る通り、〝地図が読める女〟を自負していた私も、方角を見失い迷ってしまった。
この複雑な区画構成はどのようにしてできたのか。持っていた古地図に目を通してみると、どうやらこの杭瀬寺島界隈は、田畑への水路をそのまま道路に転用し住宅街として成立したようである。
かつて水路だった道。猫が我が物顔で歩く細い路地をさまよいながら、この視界が開けた途端、田んぼが広がる風景が現れやしないか…と、ひとり錯覚を愉しんだ。
1 複雑にうねる街路
区画整理の話が持ち上がるたびに、地主や地元の強い愛情によって守られてきた複雑な町割り。便利な道なのか、通行人の往来が絶えない。
区画整理の話が持ち上がるたびに、地主や地元の強い愛情によって守られてきた複雑な町割り。便利な道なのか、通行人の往来が絶えない。
2 そこら中で出くわすのは神さま?仏さま?
杭瀬の住宅街を歩いていると、突如として小ぶりな祠やお社に出くわすことが多い(気がする)。
杭瀬の住宅街を歩いていると、突如として小ぶりな祠やお社に出くわすことが多い(気がする)。
3 縦横に走る商店街・市場
飛び交う売り声、せり出した商品がせめぎ合う市場の臨場感は、さすが「尼崎で最もディープな街」といわれる所以である。
飛び交う売り声、せり出した商品がせめぎ合う市場の臨場感は、さすが「尼崎で最もディープな街」といわれる所以である。
【アクセス】杭瀬駅から10分くらい
旅人が(独断で)つけた通信簿
活気ある商店街や市場に派生したのか、住宅地にも1階を店舗とする「下駄履き住宅」が多くみられる。街路の複雑さを写真で表現するには難易度が高いため、写真好きの方はチャレンジしてほしいところ。
尼の旅人:出口寛子(でぐちひろこ)
武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科・教務助手