続・ツクラナイマチヅクリ 尼崎にカジノができたら…

新たに施設を作らずに地域の資源を上手く使ったまちづくりを紹介

「あんた!! また尼崎競艇行ってたんか(怒)」

「誤解や。カジノの研究のために行っただけや」

「何が研究や」

「そう怒らんと、よう聞いてえや。先進国であるG8参加国でカジノが合法化されてないのはいまや日本だけや。カジノ=悪っていうイメージはもう古い。いまや都市型リゾートの中核となる観光集客施設としてカジノは世界中で注目を集めてるんや。シンガポールも2005年にカジノを合法化して、2010年には政府公認の大型カジノリゾートをオープンさせて、世界中から人を集めてる。カジノが出来た2010年のシンガポールの国際観光客は前年比で200万人も増加したんやで」

「それが尼崎と何の関係があるん?」

「あほやなぁ。カジノができれば、尼崎にもたくさん観光客が来てくれて、お金をぎょうさん落としてくれる。カジノで働く人も必要やから、雇用も生まれる。政府が経営する本物のカジノが出来れば、違法な闇カジノだって駆逐される。かえって健全になるんや。しかもカジノが儲かればそれだけ地域の税収も増え、めぐりめぐってわしらの生活もよくなる、ってわけや。ワハハハ」

「なんや、カジノさえできれば、あんたのハゲ頭に髪の毛まで生えてきそうな勢いやね。で、なんぼかかるねん?」

「せやな。2009年にマカオにオープンしたカジノ施設「シティオブドリームズ」は1700億円や。まっ、ユニバーサルスタジオ1個分やな。これだけで驚いたらあかん。現在、ベトナムで計画されているカジノリゾートは総投資額3200億円の計画、シンガポールのマリナベイにできたカジノの総投資額やって4000億円を超えとる。」

「そんなにかかんの!?」

「でも、投資回収はたったの5年や。カジノ事業者の利益率は40%以上とも言われとるしな。もっとも、こんな巨大施設はいらん。例えば、10年前に大手ゼネコンが試算した計算では、ラスベガスの中堅カジノホテルレベルでよければ、1軒たったの82億円(土地代除く)や。尼崎にもう一個アルカイックホールを造ると考えたら安いもんや」

「何がリゾートや。ようは、でっかいゲームセンターかパチンコ屋かい。まぁ、あんたの話を聞いてカジノが儲かるし、税収もあがるのはわかった。でもカジノって言っても儲かるのはカジノの経営者や自治体ばかりで、あんたのサイフは貧乏になってくだけやないの?」

「せや、それが一番の問題や」

「そんなにギャンブルしたかったら、カジノが尼崎に出来たら、うちが貧乏になるかどうか賭けようか?」

「じゃぁ、貧乏に1万円」

「アホ」

(社)日本プロジェクト産業協議会『日本版カジノ 制度・規制の考え方から計画・設立・運営まで』(東洋経済新報社、2003年)ほか


文・齊藤成人
金融機関勤務。「試算だけならタダですから」という齊藤さんに尼崎で作ってみてもらいたい事業を募集中。