尼とギャンブル水上の格闘技 尼崎ボートレース

尼崎競艇、園田競馬場…2つの公営ギャンブル場を持つ尼崎。高度経済成長期に労働者たちを熱狂させたレース場。知っているようで知らなかった尼とギャンブルの関係に迫る。

まずは行ってみよう競艇体験記から

最初に結論を言っちゃいます。競艇、めちゃくちゃおもしろいです。

場内に入ると、いきなり「ツバの吐き捨て、ゴミ箱漁り禁止」と書かれた、生まれてこのかたお目にかかったことがない立て看板にびびりながらも、意を決し、入口近くのアクアコンシェルジュのお姉さんに舟券の買い方を教わります。一通り丁寧に教えてくれた後、「競艇は1度の出走が6艇ですから当たりやすいですよ。がんばってみてください♪」とやさしい言葉をかけてもらって、こちらもテンションが上がります。「外れたら当たり散らす怖いお客さんもいるんじゃないですか?」といじわるな質問をしてみると、「そういう方とはなるべく目を合わせないように対応しますよ♪」とのこと。

さっそく「舟券王に俺はなる」とつぶやきながら、出走表と選手名鑑を見比べ予想作業に入ります。これが思ったより楽しい作業なのです。競艇は、選手個人の能力のみならず、その選手が乗るボート自体の勝率や、そのボートに付けるモーターの成績など、考えなければならないデータがたくさんあります。しかも、人間の処理能力としてちょうど良い6艇。このデータ解析作業が、物心ついたら世界の国旗を覚え、小学校でキン肉マンの超人データを全て暗記し、中学生以降詰め込み型の受験教育にいそしんできた僕の心を実にくすぐるのです。そして心から実感したのです。競艇、おもしろい、データ分析おもしろいと。

[体験した人] 齊藤成人
長年、阪神電鉄を利用しているが、ずっと見てみないふりをしていた競艇場。ギャンブルはしない主義だが、今回は思い切って駅を降りてみたアラフォー銀行員。「ツクラナイマチヅクリ」を好評連載中。

自信満々の予想で舟券を購入、いよいよ競艇場の最前列でレースを見守ります。水面とほぼ同じ高さからの初の観戦では、最初こそ「目線の位置からして、臨場感が…」などと気取って感想を述べていましたが、耳をつんざくモーターの爆音が目の前を2回くらい通りすぎたあたりから、気がつけば周りのおっちゃんと一緒に「もっとまくらんかいっ!!ボケ!!」と大声で叫んでいました。結局、予想はまったくかすりもしません。

「いや、こんなはずはない。これはモーターは良かったが、ボートが…」などとブツブツ言いつつ、次のレースの予想に入ります。これだけのデータがあってわずか6艇から選ぶのだからきっと当たるはず!!と思いながらも、数十分後には同じ結末が…。予想屋のおっちゃんの「ハイ。高配当でたよ、高配当でた」というセリフがうらめしく思えてきます。

結局、一度も当たらず、尼崎競艇名物の多幸焼き(たこ焼きのタコの代わりにコンニャクが入っています)を食べながら、帰路につきました。「そうだ、競艇おもしろかったし、最後にアクアコンシェルジュにだけは挨拶してこうかな」。そう思って近づいて「全部外れたわ」と言うと、「それは残念でしたね」と目を合わさずに返答してくれました。


まずは基本をおさえよう競艇マークシート

設立 1952年(昭和27)
蚊が多く発生して「尼蚊崎」などと揶揄された大湿地帯を掘削して造成。その土で周辺を埋め立てた妙案だった。

場所 蓬川町
阪神尼崎センタープール前駅すぐ。レース日にはJR立花駅、阪急塚口駅から無料送迎バスも運行。

年間来場者数と年間売り上げ(尼崎市開催のみ)平成22年度 198万人/151億円
ちなみに一人あたりの購買額は7,671円。

開催日 年間186日
うち130日が尼崎市主催、56日が伊丹市主催のレース。レースがない日もさらに70日間他場の舟券を販売。

券の買い方 6艇立て
一口100円から。1着を予想する単勝、1~3着の順位予想「3連単」など。6艇のレースなので的中率は高い。

キャラクター センプル君
センタープール略してセンプル。他にもピンクル、ブルタンなど色違いもいる。

場内の名物フード 多幸焼(6個100円)
タコ抜き、こんにゃく入りのたこ焼きはアテ字のセンスが光る。

知っておきたい専門用語集
[1マーク]スタートから最初に迎える第1ターンマーク。ここでレースの大勢が決する、選手にとっては最大の見せ場。
[まくり差し]アウトコースから抜き(まくり)ながら、インコースから抜く(差す)という高度な技術を要する決まり手。
[キャビル]水の中の気泡でプロペラが空回転して失速する状態。(例:あかん、キャビッとる!)

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