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競馬実況伝えた熱狂、地球3周半

兵庫県競馬実況/ダートプロ代表
吉田勝彦さん(75)

高校卒業後、声優を目指していた頃にアルバイトではじめた競馬実況の仕事。手本がほとんどない中、2年間厩舎で働き、馬のことを学び、表情や息遣いを伝える実況を心がけてきた。「どのレースにもストーリーがある。毎回どんな物語になるのか、ドキドキしながら実況しています」という75才現役。「馬券?買ったことない。これ以上ドキドキしたら体が持たないよ」という吉田さんにとって忘れられないレースがある。2008年に開催された重賞(GⅢ)競走「クィーンカップ」。この日は園田に中央競馬ファンもあわせて25000人が集い、久々の大入り満員。白熱のレース後、「園田競馬は明日もあさっても開催しております」とアナウンスした瞬間、観客から拍手が湧きおこった。「お客さんと一つになれた」。実況歴57年、87000レースの熱狂を伝えたプロの仕事である。

調教師生まれながらのホースマン

調教師
橋本忠男さん(64)

「馬小屋のワラの中が遊び場だった」という幼少時代。調教師の父を持ち、園田競馬場に隣接した厩舎で生まれ育った。子どもの頃から馬の世話は日課だったという。大学を卒業し10年間の会社勤めの後、定年目前の父を手伝うため慣れ親しんだ厩舎の仕事へ。1983年に調教師試験に合格し、自身の厩舎を構えた。現在、厩務員、騎手あわせて10人のメンバーと32頭の競走馬を支える。「中小企業の社長みたいなもんですわ」と本人は笑うが、チームスポーツともいえる競馬において、調教師はいわば総監督。馬主を口説き馬を仕入れ育てる。馬の調教はもちろん、騎手の技術指導や厩舎経営などを一手に担う。目的は一つ「勝てる馬を作ること」。今年は、デビューから10連勝を記録した注目の地方馬、オオエライジンが中央馬と渡り合う。

整備士勝敗分けるモーター整備

モーター整備士
溝畑 等さん(61)

32馬力、1分間に7000回転というエンジン65台。それを6人のチームでメンテナンスする。競艇には、各レース場のエンジンを抽選で使うという独特のルールがあり、選手はエンジンの特性をいち早く読み取り、自前のプロペラの角度を調整して性能を引き出さなくてはならない。「はずれを引いた、と言われないように注意を払います」。最も緊張するのは舟が転覆したとき。選手の身を案じるのはもちろんだが、水の入ったエンジンを次の出走までに直さなければ、選手に出場停止のペナルティが課せられてしまう。「昔は藻がプロペラに絡まってエンジンが止まったりしてね。怖い思いもしましたよ」。自動車整備士の資格で尼崎市に入庁したのが昭和43年のこと。それが今や、選手から次々と相談が寄せられる名メカニックとしてチームをまとめている。

案内係何でも聞ける初心者の味方

アクアコンシェルジュ
(左から)蓮池美代さん 長藤有希さん 中西末実さん

純白のジャケットにグリーンのパンツという鮮やかな制服に身を包んだ彼女たちは、アクアコンシェルジュ。初心者にとって少しハードルの高い、舟券の買い方やマークカードの書き方など、レースにまつわる疑問に優しく答えてくれる競艇場の水先案内人だ。場内の巡回や来場者ポイントカードの景品交換、表彰式での選手インタビューなど幅広い仕事を笑顔でこなす。しかし、ここは時にはお酒も入って真剣勝負を張る場所。笑顔を絶やさずにいるには、過酷だったりしないのだろうか?と意地悪な質問をぶつけてみると、長藤さんは「お父さん、と呼んであげたりしますね。でも、尼崎のお客さんは優しいんですよ」と教えてくれた。その受け答えが完璧すぎて、どこに比べて優しいのか、まではちょっと聞けなかった。

こんなプロもいた!

ランチタイムレポーター…競艇場でのお昼時、選手へのインタビューを場内で放送。選手のプライベートにも迫る。○マークシートレディ…園田競馬場でマークシートの書き方を教えてくれる妙齢の女性たち。実に頼りになる。〇両替屋…尼崎競艇にはかつて当たり券を配当金額の9割で買い取る人たちがいたとか。払戻所が混雑していたため、並ぶ手間を省くために生まれた職業だとか。(今はいない)○予想紙屋…競艇・競馬いずれの施設にも、入場門の前に小さなお店を構えて予想紙を販売。競艇だとダービー、ニュース、競艇研究の3紙。競馬は競馬キンキ、園田ニュースの2紙。すべて1冊450円。ほぼ日刊なのがすごい