歴史と地元愛あふれる 千年後にも伝えたい 祭りの歩き方

踊り、獅子舞といった脈々と受け継がれる伝統芸や、地域の歴史を掘り起こす挑戦など、探してみれば地域色たっぷりの神事や祭りはまだまだあった。

西難波 熊野神社 梅まつり [3月の第1日曜]

梅の里、梅香小学校、梅の木公園など、梅にまつわる地名が東難波や西難波には残っている。仁徳天皇がこの地の香り高い梅を大変気に入り、持ち帰られたという言い伝えもある。1975年に、再び界隈を梅の名所にしようと、西難波熊野神社に当時の氏子総代が60本あまりの苗木を寄附。77年からは毎年3月の第1日曜に境内で「梅まつり」が開かれるようになった。咲き誇る花を見ながら、お茶会や短歌のお披露目などでにぎわいをみせる。境内で採れた梅の実を使い、上田三郎宮司お手製の梅干しやジュースを販売するなど、梅の名所は復活を遂げた。

上食満 稲荷神社 上食満の獅子舞 [10月22・23日の前の土日]

園田地区にある上食満稲荷神社には、室町時代から獅子舞が受け継がれている。今では市内で唯一となった珍しい舞は、ゆったりとした動きが特徴。神社に奉納される演目では、獅子のからかい役であるマネシと呼ばれるお多福やヒョットコ、猿などが登場する。地元保存会からなる約10人の演者らによる掛け合いが楽しい。赤いはんてんに赤いパッチ姿の猿役は小学生が演じ、可愛いしぐさが観客の笑顔を誘う。本宮の早朝には、旧上食満地区の家々を大獅子が荒神払いに回る。あまりの迫力に泣き出す子どももいるが、大きな口で頭を噛み子どもたちの無病息災を祈る。

小田地区 小田太鼓会 [10月体育の日]

小田地区にある神社4社から、それぞれの秋祭りの巡行の途中に太鼓が一堂に集まる。小田高校前の県道を通行止めにし、氏子たちが自慢の演技を披露する一大イベントは1993年から続いている。それぞれの氏子が協力して結成された「小田太鼓会」。神社が合同で行事を開催することは珍しい。50人あまりの男たちが、太鼓がのった神輿を豪快に担ぎ廻す。振り落とされまいとバチを振る叩き手との攻防が「あばれ太鼓」の見せ場だ。各演技時間は10分ほどだが、「うちの太鼓がこそが一番」と威勢のよさを競い合う。年に一度、小田地区の人々が一体となる瞬間だ。

守部 素盞鳴神社 守部観音踊り [8月18日]

観音様の命日とされる8月18日には、守部素盞鳴神社にある観音堂が御開帳される。お堂に安置された正観音像を拝むことができる貴重なこの日には、観音講をあげ、伝統的な「観音踊り」が繰り広げられる。太鼓と三味線、御詠歌が響く境内。中央の屋台を囲み、老若男女が菊の紋が入ったそろいの浴衣を羽織って踊る。起源は1660年。皇室ゆかりの京都泉涌寺の塔頭・戒光寺から譲り受けた観音像は地元の誇りだ。以来350年にわたり、地域の人々は願い事をこめて「観音踊り」を踊り続けてきた。今も毎年1000人以上が集まる一夜限りの祭典を、観音様が優しく見守っている。