本の森へようこそ

お目当ての尼崎本が決まったらインタ-ネットでクリック1つ…じゃ、ちょっと味気ない。カラフルな背表紙が並ぶ本棚、インクの匂い、ページをめくる感触を味わいに、地域密着の書店、お宝本が眠る史料館へ。

本屋のホンネ

三和書房
昭和南通 7-161
三和本通商店街内
06-6413-1112
9:30~20:00(1/1のみ休)

三和本通商店街の真ん中。尼崎を代表する街の本屋さん「三和書房」を訪ねた。

「ふらっと立ち寄りました」といった感じの主婦やお年寄り、子どもたちの姿が目立つ。売上げの半分以上が雑誌とコミック。「いつものやつ入ってるで」と気軽に声をかける山上芳廣店長(写真右)。「名前は分からんけど趣味や家族構成ならだいたい分かる」そうだ。近所の医者が書いた本、小学校の授業で取り上げられた本、尼崎が登場する本など、地元ならではの品揃えにも気を配る。「お客さんとの会話のネタにもなる」という山上さんは商売人気質だ。

「うちはあくまでも地域密着。大手にできないことをしたい」と中島良太社長(左)。市内のお店や会社なら無料で配達する。「配達は書店のサービス。儲けはないけどね」。さらに、毎年クリスマスにはサンタの格好で子どもたちに本を届ける。

地元への情熱は、昨年10月に発売した「メイドイン尼崎ブック」の売上げにもあらわれた。外商もあわせ1000冊を突破。「尼崎の本を尼崎の本屋が売らな、誰が売る?」と他店にも呼びかけた。

三和書房は来年創業60周年を迎える。「これからも顔の見える商売をしたい」という中島社長のアタマには、次なる尼崎本の構想もあるとか。街の本屋さんは健在だ。

尼崎本の宝庫

「資料は収集するだけでは意味がなく、使ってもらってこそ価値がある」と辻川さん(写真中央)。市民の利用を促すレファレンスが、たくさんの研究成果をもたらしている。
地域研究史料館
昭和通 2-7-16 総合文化センター7階
06-6482-5246 9:00~17:30(火曜・祝日休館)

本が生まれる場所

2月に「図説尼崎の歴史」を発刊する尼崎市立地域研究史料館では、市民とスタッフによるクリエイティブな取り組みが光っている。市史に親しんでもらおうと94年に始めた『尼崎市史』を読む会や、戦後史聞き取り研究会を通して集まった参加者は、いつしか研究者へと成長。

戦後の尼崎を描いている井上眞理子さんや、帳簿で調べた幕末の中在家を復元地図にまとめた公手博さんらは、こうした活動を経て登場したエースだ。「図説~」は、一連の流れの集大成とも言えそうな一冊。さながら大学研究室のゼミのように各々の原稿を意見交換して仕上げた。同館の辻川さんは「市民同士で議論を重ねたことで、親しみやすい内容になった」と目を細める。

検索システムに進化した「本」

神戸大学と共同開発したweb版尼崎地域史事典(apedia)は、96年に発行した同書をネットで検索可能にしたシステム。6500にも及ぶキーワード検索が売りだが、特筆すべきは情報が常に更新可能という点。開発担当の西村さんをして「生きた事典を目指した」というのも納得だ。昨年7月に公開するも、サーバーのトラブルで利用中止を余儀なくされたが、4月の再開に備えて準備が進んでいる。


ブックカバーは、書店の「色」を映す。

三和書房
ピラミッドを連想させるモチーフは、さすがはアマに冠たる書店の自信の表れか。「Time and tide wait for no man(歳月人を待たず)」の言葉と共に威厳あるたたずまい。
アイビー書房
尼セン内の便利書店は青々と繁茂する植物。1号店が甲子園にあると聞けばピーンと来た?そう、実は甲子園球場のツタをイメージしたもので、店名もツタの英訳なのだ。
彩華堂
紫の線で描かれたイラストのモチーフは、なんと竹久夢二の作品。神戸の古書店数軒と共同で作ったそうだが、さすが匂い立つような色気。硬派な古書店らしい美意識を感じる。
おきな書房
「昔はランプを灯して本を読んどったから」と、創業以来このイラストは変わらず。立花にて40年のキャリアを誇る老舗は「蛍雪の功」がリアルだった時代の名残を伝える。