この尼崎本がすごい!30冊 地域本・ガイド・社史
無人島にも持っていきたい尼崎を感じる本30冊を選んだ。小説、エッセイ、地域本、ジャンルは様々、レビュアーも色々。ベスト30一挙紹介。
地域本
尼崎の今昔を伝える地域本。城下町、工業都市と公害…街のイメージや知られざる歴史に光を当てた6冊は尼崎好きなら必読。
なぜ悪い?尼崎のイメージ『イメージAMAGASAKI』
(財)あまがさき未来協会編/関西書院/一般的には悪いとされている尼崎の都市イメージの源泉を突きとめ、改善策を講じる研究会の集大成。女子大生や外国人への調査から文学作品や社会情勢の分析に至るまで守備範囲は広い。あれから10年。尼崎はどう変わっただろうか。(TT)
写真から沸き立つ時代の熱気『目で見る尼崎の100年』
生澤英太郎監修/郷土出版社/時代の変遷とともに姿を変えていく尼崎の風景を詳細な解説とともに紹介。戦争や風水害、そして震災。たびたび襲い掛かる災禍に翻弄されながらも、城下町から工都へと発展をとげていく姿にはまちや人々の熱気を感じずにいられない。(TT)
熱心に調べたらこんなことがあった『尼崎相撲ものがたり 鉄のまちの知られざる昭和』
井上真理子/神戸新聞総合出版センター/「力道山が尼崎に住んでいたと言ったら信じてもらえるだろうか」著者は深く深く探訪し探求する。人は思いもかけずに人とつながっていることが分かる。記憶を訪ねる「旅」が紡ぎ出した尼崎賛歌。(TM)
怪物に挑んだ杭瀬の高校教師『はじまりは団地の「公害日記」から』
加藤恒雄/ウインかもがわ/高度成長期、杭瀬団地に移り住んできた高校教師が公害という怪物に挑んだ。行政や企業と交渉し、全県的な運動に広がった様子が描かれる。住民独自で考案した「公害日記」でデータを集め、草の根パワーで行政や企業と向き合う。(KM)
これ一冊で尼崎博士に?『尼崎地域史事典』
尼崎市/尼崎にまつわる事件、人名、地名など1,346項目を事典形式で網羅したまさに「尼事典」。地名の由来はもちろん「尼崎競走場」「遊郭設置問題」「市章」といったキーワードは、郷土史家でなくても興味をそそる。小学生の自由研究に、尼崎のうんちく収集に使える一冊だ。(WK)
歴史好きには激レア・お宝『地域史研究』
尼崎市立地域研究史料館/1971年創刊の同館紀要。最新号(102号)の巻頭グラビアはなんと竣工当時の市庁舎お宝写真。同館に寄贈された激レア史料の紹介も。「戦国富松都市論」「尼崎市内に残る橘水道の鉄蓋」など気になるタイトルの論文やエッセイも多数掲載で年3回発行は立派。(WK)
ガイド
尼崎には名物や名店、そして名キャラがいる、ということを教えてくれるガイド本。はじめての人も地元民も「歩く前に読め」な4冊。
阪神沿線の最強「街歩き本」。『まるごと阪神沿線』
京阪神エルマガジン社/“最強の駅前”と題し、情報誌では露出の少ない阪神沿線の街情報を網羅。中でも尼崎は、商店街、焼肉、メイドイン尼崎の品々など最大の15ページにわたり登場。ネタの豊富さを見せつけた恰好だ。ただ、地図のお粗末さが珠にキズ。企画自体は面白いだけに残念。(CO)
一家に一冊。尼ネタ本の決定版『メイドイン尼崎ブック』
TMO尼崎/地ソースも湯たんぽもトラのおばちゃんも。街の人たちが街のために選んだ逸品99。プロも唸るアマの傑作商品カタログは、ゲップが出るほど濃密な尼崎愛から生まれた。読めて、使えて、目からウロコ。大阪や神戸でも話題を呼んだ純度100%の尼ネタ本。(MJ)
濃いキャラ詰まってます『みやけなおこと尼人達』
三宅奈緒子/かんぽう/マイク片手にまちへ繰り出し、出会った人々を紹介するFMaiaiの番組を単行本化。スナップ写真の数々が著者出身地の五島弁でほのぼのと綴られている。放送回数200回を超えるだけあり、よく歩いている様子はまちの点景からも伝わってくる。(TT)
アマ=大阪は、名物でも?『大阪名物』
井上理津子・団田芳子/創元社/水茄子、きつねうどんといった大阪名物オールスターズの中に、シレッと何食わぬ顔で尼崎の誇る「ヒノデ水飴」と「ひろたのぽんず」が登場。断っておくが大阪名物の本である。アマの名品の実力を知ると共に、図らずも尼崎=大阪という関西人の意識がのぞく。(CO)
社史
企業理念に込めた熱い想い、辣腕の経営者、新製品の開発秘話。会社の数だけドラマがある。重厚なページに刻まれた企業の足跡をたどる。
アスベスト禍の軌跡をたどる『クボタ100年』
クボタ/1917年に尼崎に進出したクボタは市内に三工場を持つまでに成長する。問題の石綿パイプは54年に生産開始。「一時期は注目を集めたが、(中略)需要が減退し、昭和50(1975)年には生産を停止した」。淡々とした記述に過ぎ去った時と石綿禍の根深さを感じる。(KM)
僕らのあましん 80年のあゆみ『尼崎信用金庫八十年史』
八十年史編纂委員会/国内指折りの信金に成長した尼信の正史。「郷土のお金を郷土に資金化」というモットーがいい。氏平競重会長、橋本博之理事長の巻頭言はダーウィンの進化論を引用。「唯一生き残るのは変化できるものである」。金融激動の時代、変化に期待したい。(KM)
地元愛で作りました。アマのインディーズ本
「○○な尼崎」と安易にひと言でくくるなかれ。尼崎愛溢れる人にかかれば、多様な尼崎が見えてくる。もうひとつの尼崎の姿を伝えてくれる自費出版本、4冊を選んでご紹介。残念ながら、どれも今は入手困難だが図書館で見ることができる。 (KA)
『尼崎神社あんない市内六十六社のしおり』
兵庫県神道青年会/「ごちゃごちゃした」喧騒の街と形容される尼崎に、これだけの鎮守の杜があると思うと、イメージも変わりそう。
『尼崎さくら散歩』
同出版実行委員会/市内のさくら名所の代表格といえば2000本のソメイヨシノが植えられた武庫川河川敷。でも桜は数だけで見るものではない。お気に入りの桜の木を探しに行こう。
『工都の情景 尼崎テクノスケープ絵葉書文庫』
(財)尼崎地域・産業活性化機構/錆付いた鉄扉に思わず「キレイ」とつぶやく。煙突、パイプの無機質な、でも確かな存在感はマニアでなくとも魅了される。
『ベイエリアは誰のものか』
尼崎都市・自治体問題研究所/臨海部に工場が進出した明治以降、市民にとって海は遠い存在に。ベイエリアの歴史に関する少ない資料を基に、丹念に事実を掘り起こした労作。
[ブックレビュアー]
CO=大迫力 KM=加藤正文 KA=香山明子 MJ=松本創 TM=田中正郎 TT=綱本武雄 WK=若狭健作