野球に捧げる乙女の青春日本女子プロ野球 兵庫スイングスマイリーズ

河川敷で白球を追う少年、尼崎にホームグラウンドを構える女子プロ、大人になっても熱い草野球、裾野の広さは半端じゃない。トラに熱狂するだけじゃない尼のベースボール事情。やっぱりこの街には野球が似合う。

「やっぱり華やかやし、プレイもひたむきでしょ。男子のプロ野球はテレビでしか見ないけど、彼女らの試合はスタンドで応援したくなるんです」。

一人観客席で試合を見守る中年男性が見どころを教えてくれた。たしかに白球を追う彼女らの姿は、見ていて何やらドキドキする。流行りの「萌え」などとはまったく違う感覚。アウトを取って笑顔で声をかけあう選手たちからは「野球が好きでたまらない」といった気持ちが伝わってくる。

2009年に設立した日本女子プロ野球機構。10年から「京都アストドリームス」と「兵庫スイングスマイリーズ」の2チームによるリーグが開幕した。過去3回のリーグ戦では毎回優勝を飾ってきたスマイリーズ。本拠地の一つは尼崎にあるベイコム野球場、まさに地元球団なのだ。この日は舞洲スタジアムでの試合を観戦。少年野球チーム、家族連れやカップルなど、公設応援団がタイコとラッパ、笛を鳴らして応援する観客席の顔ぶれは様々だ。

「さっちゃ~ん、頼むで」「あかね~見せたれぇ」。飛び交う声援は親戚の子を応援するようなフレンドリーさ。スタンドからの声にちらりと振り向く選手もいるなど、とにかくグラウンドとの距離が近い。

尼崎的注目選手 中村 茜 外野手
1989年尼崎市生まれ。少年軟式野球チーム「浜田野球」に入団。大庄北中ソフトボール部では日本一に輝く。京都西山高、太陽誘電で活躍ののち、女子プロ野球「京都アストドリームス」入団を機に野球に転向。160センチと小柄ながら80メートルを超える遠投とシュアな打撃で今期よりスマイリーズへ移籍。右投左打。

7回表の最終回、1点リードを守るスマイリーズのファースト・滝澤彩選手の肩をライナーが強襲。体を張って打球を止め、冷静にベースを踏む彼女の姿はプロそのものだ。1対0の投手戦を制してゲームセット。試合後、滝澤選手に話を聞いた。「あんないいピッチングをされたら、こっちも気合いが入りますよ。体? 大丈夫、そのために鍛えてますから」。

試合終了後、選手たちはごみ袋を手に観客席へと向かう。恒例のスタンド清掃だ。ファンに囲まれて「ナイスゲーム」「次は打ってや」と声をかけられ、ハイタッチやサインに応える姿にプロの心意気を見た。

「子どもたちに全力プレイを見せたい。野球ができる喜びが伝われば」というのは尼崎出身の中村茜選手。女子でも野球が好きで頑張ればプロになれる。男子に交じってプレイする野球少女たちの目標が女子プロ野球の世界なのである。

関西女子プロ野球リーグ

今年7月にはリーグ史上初ホームランが飛び出すなど、進化する女子プロ野球。シーズンは4月~7月の前期と7月~10月の後期に行われる。試合日程はホームページで確認を。