続・ツクラナイマチヅクリ 尼崎にプロ野球チームを作ろう

新たに施設を作らずに地域の資源を上手く使ったまちづくりを紹介

先生 今日は野球について、じっくり探っていきましょう

生徒 はい。大阪と西宮にプロ野球チームの本拠地になるような大きな球場があるんだから、間に挟まれた尼崎にだってあったっていいですよね!!

先生 その通り。大阪市と西宮市には、それぞれプロ野球球団が本拠地をおくような立派な球場がありますよね。では、プロ野球チームの本拠地がある地域の特徴はいったい何でしょう。おわかりですか?

生徒 え~っと、人口が多い!!

先生 尼崎市と西宮市の人口はほとんど変わりませんよ。他にどなたかありませんか?

生徒 駅と関係ありますか。

先生 良いところに目をつけましたね。実は、もともとプロ野球チームは、親会社であった鉄道会社が、自分たちの鉄道にもっと乗ってもらうために、駅の近くに野球場を作ったケースが多いです。

生徒 えぇ~。だったらJR尼崎駅の近くにも作ったらいいじゃない。

先生 そう簡単にいくのでしょうか。では、野球場を作るためにはいったいいくらかかるんでしょうか。表をご覧ください。

表:最近建設された全国の野球場

生徒 ドーム型は高いですが、屋外型だったら100億円以下で建設できるんですね。思ったよりも高くないです。尼崎市民が1人3万円もだせばできるじゃないですか。

先生 今そうおっしゃいましたがそれがどうやらそうでもなさそうなんです。新たに作る場合は、建設費に加えて土地代がかかってしまいます。また、作るだけならできるかもしれませんが、注意して欲しいのは、球場は作った後に維持費がかかるということです。そもそも大きな野球場の場合、年間の管理費用は水道光熱費や芝の維持費や清掃費、将来の改築費の積立など年間2億円くらいはかかります。甲子園や東京ドームといった有名球場は別格ですが、プロ野球チームが本拠地にしている球場であっても年間稼働率はせいぜい60%程度です(屋外型・人工芝の場合)。仮に年間稼働日数を200日とすれば、1日当たり最低100万円の球場使用料を利用者からもらわなければ赤字になってしまいます。尼崎市内の草野球チームで1回100万円の使用料を支払うチームがどれだけあるでしょうか。ちなみに甲子園の平日使用料金は80万円です。

生徒 だったら、プロ野球チームを誘致すればいいですよ。横浜ベイスターズは横浜スタジアムに年間7~8億円の球場使用料を支払っているって聞きましたよ。

先生 その球場使用料が高いため、各プロ野球球団の収支が赤字になっているのは有名なお話です。東北楽天イーグルスが球団1年目で5000万円の黒字になったと話題になりましたが、そのときの球場使用料は年間4900万円に抑えたからなんです。

生徒 えっ!?

先生 プロ野球チームは選手の年俸の高騰によって数チームを除いて、どのチームも毎年5億円程度の赤字になっています。ただし、この赤字は親会社の決算上損金扱いとなり税額控除できる仕組みだから、赤字であっても広告宣伝費代わりにチームを保有し続けていられます。では、尼崎に本拠地をおくプロ野球チームを持ってくれる会社、つまり、尼崎市内に本社があって最終利益が10億円以上の会社は何社くらいあるとお思いでしょうか?

生徒 ・・・。

先生 直近2期連続で最終利益が10億円以上を計上した会社はわずか10社以下です。しかもその中には生活消費財を扱う、一般の人への知名度をあげるためにプロ野球チームを持ちたい会社は1社もありません。一概にそうとは言い切れませんが、市内に自分たちがプロ野球チームを持ちたいという会社はゼロと言っても良いかもしれません。

生徒 プロ野球チームがなければ、尼崎市はでっかい野球場を持つことができないのでしょうか?

先生 いいえ、1つだけ方法があります。甲子園球場があるあたりの地域を尼崎市に併合してしまえばいいのです。

生徒 ・・・!!


文・齊藤成人
金融機関勤務。「試算だけならタダですから」という齊藤さんに尼崎で作ってみてもらいたい事業を募集中。