フード風土 28軒目 そば処 竹生

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。
取材・文=松本創(本誌)

ええ肉、ええだし、豪快カツ丼

本誌21号「ちょい尼オヤジ」特集の表紙をかざったこの雄姿。カツ丼はお吸い物がついて650円。手前は「最近なんか知らんけど、よう出るんや」という焼豚定食。

カツ丼は力の入る食い物だ。筆者が敬愛する日本一のブルースマン吾妻光良氏は、ふだんは飄々として肩の力の抜けた人だが、カツ丼を語る時だけは全力だった。「活力源となるのはやはり揚物、しかもエビや魚ではなく肉!さらに玉子!でパワーは倍加され…」と。まあその結果、のちに痛風の歌を作ることになるわけだが。

尼崎にもきっと数多い、そんな熱きカツ丼党の思いに、力強く応えてくれるのが西大物のそば処[竹生]の店主、麻生弘さん(61)だ。毎朝のそば打ちと数人前を軽々担ぐ出前で鍛えた分厚い胸板、スキンヘッド歴30年、それにヒゲの一見コワモテだが、実は滅法気のいい大将。奥さんの千代子さん(59)が「顔はあんなんやけど、ホンマ真面目で優しくて…」と思わずノロけるほどである。

その大将によると、「うまいカツ丼のコツ?ええ肉を使うことに尽きるわな」。チャップと呼ばれる豚ロースを一枚まるごと仕入れ、分厚く切り分けて揚げたカツは、なるほど豪快。丼鉢にギュッと詰め込まれたご飯、柔らかく絡まる玉子と相まって、見た目以上のボリューム感で迫ってくる。

それから何といってもだし。丼物のたれもそばつゆも定食の煮物も、これがすべての基本。三斗釜でカツオの白だしをひくのが大将の朝一番の仕事だ。「ガッとつかんでバッと入れるよ」と、やはり仕事ぶりは豪快だが、漂い出す優しい匂いは街の道しるべ。毎朝散歩する目の不自由なお年寄りが「ああ竹生さんの前やな」と、目印にしているそうだ。

一見豪快、その実、繊細。まるで大将の人柄のような竹生のカツ丼。以前は警察署の取調室に直接届けることもあったらしい。この味で何人の犯人が落ちただろうか。

ちなみに、マッチョな大飯食らいを満足させるメニューは他にもある。若い警察署員のリクエストで特別に作るスペシャル丼(1000円)は牛肉、トンカツ、かしわ入り。分厚く切った自家製焼き豚を特製たれで食べる焼豚定食(850円)は、最近遠方からわざわざ食べに来るほどの評判だそうだ。■松本創


28軒目 そば処竹生

尼崎市西大物町10-12
11:00~14:00
16:00~20:00
日祝休
TEL:06-6401-7096