なんば線で何が変わる? みんなの期待感

アクセスの便利さや人の流れ、まちのイメージや都市の構造…新線開通が秘める可能性を、地元はもちろん、お隣の駅や都市の専門家たちに聞いてみた。

都市的期待感

インパクト絶大。私もさっそく乗りました
公共交通の専門家 神戸国際大学教授・土井勉さん

公共交通とまちづくりが私の専門です。関西ではここ数年、JRおおさか東線、京阪中之島線など新線開業が相次ぎましたが、今回の阪神なんば線のインパクトは段違いですね。私もさっそく乗りましたが、かなり快適で、利用価値も大きい。単なる延伸とは違い、阪神・近鉄の相互乗り入れによって既存の路線がネットワーク化され、新たな移動軸が誕生したからです。

神戸と奈良が結ばれたことで、観光需要への期待がよく語られますが、それよりも通勤通学など日常の足が充実したことが大きい。たとえば、堺や東大阪から尼崎の工場へ車で通っていた人が、電車にシフトするかもしれない。すると沿線の乗降客は増えますし、国道43号線の車が減り、環境負荷が低減するという効果だって見込めます。

乗り入れの結節点となる阪神尼崎駅へのインパクトも絶大。三宮を上回る人数が降りる可能性があるわけですから。その人たちをどうやって改札の外へ誘導するか。尼崎ならではの地べたの商店街の魅力をどれだけアピールできるか。そういうことが課題になるでしょうね。

隣町的期待感

中央・三和商店街とコラボイベントをやりたいんですよ!
九条の商店街でバファローズを応援する安田和志さん

ナインモール九条商店街の青年部部長をやっています。2年前から広告代理店に頼らないイベントを多数企画していて、特に昨年、オリックスバファローズがクライマックスシリーズに進出した時は、アーケード内にくす玉を作ったんです。開業記念イベントの寄席や田中星児さんのコンサートも好評でした。

せっかく繋がるんやし、中央・三和商店街さんとも一緒に何かやりたい。例えば、プロ野球の交流戦でバファローズとタイガースが対戦するのに合わせてセールをしたり、特典をつけたり。商店街の“サブウェイシリーズ”になれば、きっと話題になりますよ。

通勤的期待感

朝は爆睡、帰りは爆酔できます
武庫川から布施に通う会社員・山下祐生さん

自宅に近い武庫川駅から近鉄布施駅まで通勤しています。新線で一番ありがたいのは、座れるようになった事ですね。尼まで行くと「尼崎始発」の電車があってほぼ毎朝座れます。以前は乗り換えも2回あって、次の電車まで走ることも多かったのですが、今はホームで待つだけ。本当に助かってます。あと、通勤族に嬉しいのは、梅田で飲んでも難波で飲んでも定期券で帰れること。遊び場が広がってだいぶ楽しくなりましたね。もし酔っ払っても、終電に乗りさえすればとりあえず尼までは行ってくれますんで、タクシー代で泣かずにすむのも心強いとこですね。

大物的期待感

住むなら今。若い人にも魅力的な立地になりました
大物主神社宮司・畑中康伸さん

大物主神社で宮司をしており、生まれも育ちも大物です。これまでは知る人ぞ知る、少しマイナーな駅でしたが、歴史の名所が多く、最近は「歩こう会」など歴史散歩を楽しむ人を多く見かけるようになりました。氏子の方々をはじめ年配の方は「親戚の家に行くのが便利になった」なんて喜んでおられますよ。さすがに「ミナミに繰り出そうか」とまではいきませんが。尼崎駅周辺では家賃も上がっていると聞きますが、実は大物も電車一本でキタとミナミにつながる便利な駅。こちらは手頃な物件が多く、若い人にとっても魅力的なんじゃないでしょうか。

駅的期待感

レジャーのお客様が確実に増えています
阪神尼崎駅首席助役 佐野和弘さん

尼崎駅勤務は3年目になります。尼崎駅管区は、本線の尼崎市内各駅、武庫川線、そして新線のなんば線までを担当しています。駅長以下80人の大所帯になりました。近鉄の10両編成の連結や解除を行う重要な駅ですし、安全運行には細心の注意を払っています。改札やホームにいると、明らかに人の流れが変わったと感じます。「難波へはこの電車でいいんですか?」という質問も多いですよ。他にも、奈良へ行かれるのでしょうか、尼崎駅で集合するハイキング姿のグループも増えました。近畿一円の案内業務に対応できるよう、駅員一同勉強していきたいと思っています。