THE 技 西立花から世界へ プロが認めるギター工房

ものづくりのまち尼崎に息づく匠の技の数々。最先端技術、職人技、妙技、必殺技…。
アマから繰り出されるワザに迫る

「音は正直に評価する。いい音の楽器は美しい」。知人のバイオリン職人の言葉を思い出しながら訪ねたのは、エレキギターとベースのオーダーメイド工房『サゴ・ニュー・マテリアル・ギターズ』。ギタリストから職人になった高山賢さん(33)が一昨年、西立花町に開いた。

制作は、発注者のイメージをじっくり聞くところから始まる。どんな木材を使うか。ボディやネックの形は。色は…。打ち合わせを重ね、依頼者の考える「カッコよさ」をモノに落とし込んでいく。「しっかりお客さんの希望を聞いて、わがままを叶えてあげたいですね」と高山さん。

作業は、材料の切断、部品加工、組み立て、塗装と、工程ごとに専用ブースで進む。「音を決めるのは8割が電気部品で、本体は2割。でも手作業の部分も決して手が抜けないんです」。

特に精度を要するのが弦とフレットのバランスだ。楽器に張った弦の半分の長さが1オクターブ。そこに12フレットを打ち込んで音階をつくる。厳密に守らなければ音程は保てない。

最後は塗装。幾重にも塗り重ねてから磨き上げると、木とは思えないツヤが出る。木目を生かしたオイル仕上げも魅力的だ。価格は1本20万円以上。決して安くはないが、制作に3~6か月をかけると聞いて納得。

現在5人が働く工房には、昨年ハンガリー出身のコントラバス職人が加入。クラシック楽器の制作技法やデザインを取り入れたギターは、工房の顔になりつつある。作業工程を英語で綴ったブログは海外のミュージシャンも注目していて、受注も少しずつ増えているという。「いずれは海外にも工房を構えたい」と、高山さんの夢は広がる。

Sago New Material Guitars(サゴ ニュー マテリアル ギターズ)

西立花町4-15-8 TEL:06-6430-6760 ホームページ


取材と文/岡崎勝宏
1971年尼崎生まれ。工業デザインを志し、気がつけば建築の深みへ、アマ発の建築を考える。