ガイコク文化への扉
アンデスの風が吹いた夜
「今日は、アンデスの楽器だけを使います」。6月の末、塚口のピッコロシアター。リーダーのアントニオ・カマケさんのMCで演奏が始まると、4人は手持ちの楽器と重厚なコーラスで会場を満たしていく。
京阪神のストリートと東京~九州間のイベント会場で磨きをかけてきた演奏は実にタイト。メンバーをして「音楽理論を学んだ賜物」という緻密なアレンジは、譜面に起こしてイメージを共有するという。大きく左右に体をゆすりながら演奏するメンバーに呼応するように、座席を立って客が踊り狂う。
ペルー南部のアレキパで結成して、今年で10年。メンバーはプロの演奏者であることにこだわり、楽器を教えて生計を立ててきた。アントニオさんが「民謡だけのステージは初めてで、実は不安でした」と言うと、包みこむような拍手が沸き起こった。
ネイティブに習うハングル
02年日韓サッカーW杯、空前の冬ソナ人気。日本中を巻き込んだ韓流ブームは、もともと在日コリアンが多く、美味しいキムチや焼肉の店に親しんでいる尼崎市民の心にも火をつけた。
週1回、立花公民館で開かれているハングル講座。在日コリアンや留学生を講師に、中高年の女性たちが学んでいる。「韓国ドラマで勉強した単語が出てくると嬉しい」という声も多数。韓流の熱波は健在である。
「尼崎の人は韓国のことをよく知っている。ご近所からキムチをもらうこともあるくらい」と来日5年目、尼崎在住の講師・李英姫(イヨンヒ)さん。童謡の合唱ではじまる親しみやすいレッスンは初心者でも安心だ。
バングラデシュを味わう
厨房に立つ江守峰子さんの師匠は、かつてバングラデシュ大使付きのシェフを務めた夫のアブル・カラム・アザドさん。10年前に2人で店を開くと、祖国の味を懐かしむ人、アジア好き、近所のお年寄りまで、さまざまな人が集った。
塚口本町1-8-6 06-6421-9433
17:30~21:30 水曜定休 土日のみランチもあり
「バングラデシュは季節の野菜や魚介類が豊富。主食はお米で、日本より粒の小さいのをよく食べますよ」。インド料理でおなじみのカレーやサモサ、タンドリーチキンも、油や唐辛子が抑え目で食べやすく。
ご主人は昨年亡くなってしまったが、入口脇では形見のようにレンガ造りのタンドール(窯)が見守っている。
ガイコクジンを支えるニッポンジン モンゴル人のお母さん
昭和通でガラス店を営む黒谷侑子さんは、本業の傍らでモンゴル人留学生の暮らしを支えている。きっかけは、内モンゴル自治区で高校の設立に関わったこと。モンゴルの伝統文化と広い視野を身につけた卒業生たちを日本へ受け入れることになった。
「教師になりたい」「海外と取引する商社を興したい」。日本での経験を母国で活かしたいと願う若者たち。「遠くを見据えるように、自分の将来を描いている。そこがいい」。
親の支援は日本への渡航費で底をつくため、学生たちはアルバイトが必須になる。黒谷さんは、その保証人になったり、布団や冷蔵庫などの家財道具を貸し、彼らが少しでも勉強に集中できるようにと奔走する。「おせっかいな性分なんですよ」。車座になって食事をしながら近況を交換するが楽しみだという。