叫べ!まちの市場たち ICHIBA CALLING 第6回 [最終回] ナイス市場

新規出店大歓迎。ナイスな変化が生まれた市場

寿々屋の西山文子さん。名物はスープたこ焼きは、明石焼とはひと味違ったやさしい味。

名前のインパクトではどこにも負けない神田北通の「ナイス市場」。いったいどこがナイスなのか?興味をそそられ足を運んだ。中央商店街と三和商店街のバイパス的立地にあり、生鮮食料品や老舗呉服店が並ぶ。一見昔ながらの小売市場と思いきや、中に入ると、アンティーク雑貨店、占いの店、スープたこ焼きの店といったユニークな店が並ぶ。周辺で深刻な空き店舗がここではほとんど見られない。

3年前に新規開店したお好み焼きとスープたこ焼きの店[寿々屋]は、かつて[つぼ屋]と呼ばれた老舗店。[つぼ屋]閉店の噂を聞いたかつての常連、西山文子さんが「子どもの頃に食べた味を引き継ぎたい」と店を継ぐ決意をする。「この店には、子どもの頃の楽しい思い出がいっぱい詰まってる。この味を守りたい。その思いだけやで」と笑う西山さんには、店主としての顔と、つぼ屋のファンとしての顔の両方が見える。


Stellaの和泉隆伯さん。軽快なトークと良心的な価格が評判を呼び、地元常連客の心をつかんだ。

和泉隆伯さんが西洋占星術の[Stella]をオープンしたのは2年前。仙台で働いていた和泉さんだったが、リタイア後に親戚が多く住む尼崎へ。仙台にいた頃「女の子にモテる」という不純な(?)動機から勉強をはじめた占星術。第二の人生として、本格的に占いの道へ入った。それにしても、なぜ市場で?「生まれ育った大阪の商店街に似た雰囲気が懐かしくて。それに、占いは表通りよりもこういう奥まった所の方が入りやすいやろ」。

子どもの頃の思い出を市場で引き継いだ西山さん。第二の人生を市場でスタートした和泉さん。市場というと「昔ながらの付き合いがあって、新参者は入りにくい」というイメージがあるかもしれない。でも、留守にしているお向かいさんの店番をしたり、楽しそうに世間話をしたり…という彼らを見ていると、決してそんなことはないのだと実感する。

「市場」という場所は、いろいろな形の「夢」を実現するための一つの舞台。そして、その「夢」を受け入れるだけの器が市場にはある。


ナイス市場


ほうじょう みよ
1985年生まれ。大阪府茨木市で太陽の塔を眺めながら育った大学生