nanbu walker 第9回 暖かい たこ焼きのまち
「阪神武庫川駅周辺はたこ焼き屋が多い」。昨年10月の南部ウォークでのこんな小さな発見も南部再生は見逃しません。ひょっとしたら武庫川町は「たこ焼きの聖地」かもしれないという淡い期待を抱きつつ、追加レポートをお願いしました。
交代でお店やってるの?
阪神武庫川駅から線路沿いの商店街を歩くと、“たこ焼き”と書かれた看板がいくつか目にとまる。といっても、そのお店はたこ焼き専門店ではなく、たこ焼きをサブメニューで販売しているお店がほとんど。その中には、開いているお店もあればシャッターを閉めているお店もある。まるで交代で商売をしているよう。商店街全体にのんびりとした空気が流れている。
そんなお店のひとつ、“パンダ”の前まで来た。その色あせた看板には、エプロンをつけた親パンダが子供パンダをおんぶしている絵が描かれている。とても愛らしい。店の外では、エプロンをつけた店の奥さんらしき人が、通りかかった人と楽しそうに会話を弾ませている。店の中にはせっせと働く男の人。きっとお父さんだろう。黙々とたこ焼きを作っている姿はたくましい。そして、奥の部屋では子供がテレビに夢中になっている様子で、じっと座っている。
なんだかここには、日本人の忘れかけている大切なものが残っているようだ。そこにはまさしく看板のパンダ親子のような愛がある。
武庫川本通へと曲がりさらに歩くと、緑地の看板に“おやつコーナー とらや”という文字が。“おやつコーナー”…気になる。どんなおやつを売っているのか覗いてみると、大判焼きにこれまた“たこ焼き”。ここでお腹も減ったので、たこ焼きを買うことにした。やさしそうな奥さんが出てきて、寒いですねと言葉を交し合う。
暖かいたこ焼きを食べながら来た道を引き返していると、さっきのお店“パンダ”の前ではまだ奥さんは話しこんでいる。私は、冬の寒さを忘れて、少しだけ暖かい気持ちになった。
出口 寛子(でぐち ひろこ)
1982年山口県宇部市生まれ 武庫川女子大学生活環境学部3年生 野球と宮崎駿映画が好きです