3時の働くあなた

消防指令センター

尼崎市防災センター(昭和通2)5階にある消防指令センターは、現在では伊丹市との共同運営。約30万世帯65万人の119を一手に引き受けている。

午前2時。短い仮眠をとった後、眠い目をこすりながら取材へ向かう。普段ならぐっすりと寝ている時間であって正直に言うと非常に眠いのだが、こんな時間に働いてくれている人がいるおかげで僕たちは安心して生活することができる。

今回訪れたのは消防指令センター。僕たちが119に電話をかけると、ここにつながる。災害や気象情報の管理をはじめ業務は多岐に及ぶが、主なものは通報を受けて、消防車や救急車の手配をはじめとした指令を各方面に出すこと。お話をうかがった鈴木芳美さん(写真手前)はこの道30年以上の大ベテランだ。勤務は隔日で1回16時間。指令台に3時間座った後デスクワークをこなし、仮眠や休憩に入るのを繰り返すという勤務体制になっている。

通報が入るとまず指令台が通話をおこなう。その間に他に控える指令台は会話をモニターしつつデータ照会や車両の手配などバックアップをおこなう。目の前のモニターやパネルを操る手際の良さは流石だ。もちろん稼働できる緊急車両(ちなみに救急車は8台)は限られており、すべてに対して車両が出動する訳ではない。電話で指示を出して対応してもらうこともあるし、残念なことにいたずらや酔っ払いからの電話も少なくない。通報者と現場の板挟みになりながら、状況を見極め的確な判断をしなければならない。電話での顔の見えない相手とのやりとりはストレスも多く「タフでないといけない」という。

平成24年度にかかってきた119番通報は47346回で、1日にすると平均129.4回。「暦や天候によってかかってくる件数が多いか少ないか、だいたい見当がつく」と鈴木さん。取材当日は「今日は少ない方」とのことだったが、それでも午前3時の時点で11件、20分に1回は電話が鳴っていることになる(その内10件が尼崎…)。

最近では効率化のために、近隣地域との指令センターの共同運営が全国に広まりつつあるという。たしかに消防署や病院は現場近くにあった方がいいが、電話がどこにかかるかはあまり気にしない。でも、あまりに遠方だったりとんでもない広域を1カ所で管理されるのは…。カバーする範囲はどうやって決めるのだろう。世帯数なのか、人口なのか人口密度なのか…いずれにせよ適切な範囲で見守られながら眠りたいなと思いながら帰路についた。

この日のお夜食
自分で作った焼うどん

「夕方に自分で焼きうどん作って食べました。もう年やからこれで朝まで持ちますよ」。今年で定年を迎える鈴木さんは夜食を食べない主義だとか。おなじみ西大物町のそば処竹生の出前も定番メニュー。


取材・文/ながいじゅんいち
神戸山手大学講師。専攻は社会学、文化社会学、メディア論など。あとロックフェス!