フード風土 35軒目 アジアン料理ヒマラヤ

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。
取材・文=松本創(本誌)

地下街から世界最高峰を夢見る

ヒマラヤへは夢で行ったことがある。かつて睡眠時無呼吸症候群だった頃、寝ている間に血中の酸素が著しく低下し、「この数値はあなた、ヒマラヤにいるようなもんです」と医者に宣告された。以来、「寝ながらにして世界の頂を極めた男」と周囲から畏敬の視線を送られてきたわけだが、今回は尼崎のヒマラヤに挑むことになった。

「ナマステシマショウカ」とサービス精神旺盛なラメスさん(左)とレーサムさん。ナンやチキンを焼く窯も備え、カレー(セット650円~)も多種多様に揃う。

立花駅前の[アジアン料理ヒマラヤ]。店名は世界最高峰だが、ビルの地下街にある。昨年12月に開店してまだ半年足らずながら、その味とボリューム、店に立つネパールの若者の親しみやすさもあって、街で評判らしい。エスカレーターで下りてゆくと正面に現れる入口は手書きメニューでいっぱい。大衆中華店の風情である。

3種類あるランチセット590円も、チャーハン、トゥクパ(ネパール風ラーメン)、チョウミン(チベット風焼きそば)と微妙に中華寄り。ネパールといえばカレーが常食(で、もちろん店の看板メニュー)だけれど、一方で、中国やチベットなど周辺の食文化と混ざり合った料理も多い、と店長のアディカリ・ラメスさん(30)が教えてくれた。「コレガ人気デスネ」という彼の勧めでチョウミンをいただく。

出てきた皿は、鶏肉と野菜ふんだんな麺がどっさり盛られ、キツネ色のソースが絡んで、いかにも旨そうな香味と光沢を放っている。スイートチリソースがほんのりアジア飯テイストを醸すものの、ベースはニンニクや醤油の食べ慣れた味わい。ズルズルと勢いよくかき込めば、ヒマラヤの湧水で仕込んだあっさりビール「ゴルカ」が沁みる。

添えてあるソースは、焼きそばにかけてもよし、そのまま舐めてもよし。「漬物デス」と、もう一人の料理人グルンガ・レーサムさん(30)が言うので、ビール片手にチビチビ名残を惜しんでいたら、「コレニモ合イマスヨ」とラメスさんに勧められ、モモ294円を追加。肉汁あふれ出すチベット風小籠包である。

チョウミンも、モモも、ネパールでは午後の腹ふさぎによく食べるそうだ。ヒマラヤ山脈を眺めて暮らす人びとの豊かな食卓を、駅ビルの地下から夢見る休日の昼下がりであった。


35軒目 アジアン料理ヒマラヤ

七松町1-1-1 立花ジョイタウンB1F
11:00~15:00
17:00~23:00(L.O 21:00)無休
TEL:06-6416-5344