おどる、走る、ともに歌うビッグイベント in ムコガワ

水辺で躍る夏の夜 武庫川盆踊り

一晩で6千人。「阪神間最大」とも言われる盆踊り大会が河川敷で開かれている。武庫川駅の少し南側、高さ5メートルを超えるやぐらを囲んで、幼稚園児や着物を着た達人たちが踊りまくるのだ。土手に作られた客席には提灯がずらりと飾られ、夕涼みをしながら楽しむギャラリーも殺到する。

河川敷には60店近い夜店が並び、西宮や大阪など川を超えても足を運ぶ客も。

17時頃からどこからともなく人が集まって、知らないうちに踊りの輪ができていく。過剰な演出やセレモニーはない。同じアホなら踊らな損、と思わず飛び込みたくなる雰囲気がそこにはある。

もとは公園で開かれていた地蔵盆が昭和40年頃から武庫川河川敷へと移ってからは、阪神大震災の年以外は欠かさず開かれ、すっかり地域の恒例行事になっている。

「地域を離れて暮らす人たちもこの日には帰ってくる。うちの街にとっては正月が来るようなもんですよ」というのは、武庫川町社会福祉連絡協議会の賴城善昌会長。設営や警備などに必要な200万円近い開催資金は毎年寄付でまかない、会場整理や設営などに地元の人たちが汗を流す。「他の街にはないしんどい仕事ですよ。でもやめようという人はいません。武庫川町の誇りですから」。毎年8月23日から25日。武庫川町がもっともアツくなる夜なのだ。

伝統の河川敷ラン ユリカモメマラソン

スタートは阪神武庫川駅。500人を超えるランナーが秋の河川敷を疾走する。「ユリカモメマラソンin武庫川」と名付けられたフルマラソン大会は、来年で30周年を迎える伝統あるレースだ。主催する武庫川スポーツクラブは、会員数150人からなる武庫川ランナーたちが自然に集まり1982年に発足。クラブでは他にも70キロを走るウルトラマラソンや駅伝など、年に5回もの大会を企画している。

「武庫川はランナーにとっては最高の環境。全面土のコースは珍しく、ひざに負担がかからないし、川に集まる鳥や六甲山など四季を感じながら走れるのも楽しいんです」というのは、同クラブ事務局長の加藤和彦さん。メンバーの顔ぶれも、福岡国際や大阪国際女子マラソンに出場するトップランナーから最高齢84歳のベテランまで実に多様。「まずは毎月の記録会や練習会に参加してみて」と加藤さん。スケジュールは同クラブホームページで確認を。

たそがれに響く音 啓明中学校たそがれコンサート

夏休み最後の週末になると、黄昏の河川敷に中学生たちの音色が響きわたる。地元の啓明中学校の「たそがれコンサート」。河川敷に並んだ100席はあっというまに満席。『北国の春』『青い山脈』『八木節』といった懐メロを奏で、地域の人たちが口ずさむ。第1回は1977年。「窓ガラスなんてもちろんなかったよ」と地元の人が言うほど荒れていた中学のイメージを払しょくしようと、地域で資金を集めて後援会を作り吹奏楽部を結成した。

その効果はじわじわとあらわれ、30年以上を経て啓明中学校は市内屈指の優秀校となった。「地域の人が楽しみにしてくれて、生徒にも励みになっています」というのは顧問の土居原広夢先生。今年も8月27日の夕方から、22人の部員とともに河川敷を盛り上げる。