フード風土 21軒目 オッサミーノ

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。

イタリア屋台でトマトづくし

トマトづくしの3品はどれも絶品

「お嬢さん、ちょっとイタリアンでも」というときには、しゃなりしゃなりと武庫之荘や南塚口あたりへ向かうのが尼崎的スタンダードなのであろうが、いや、阪神沿線もあなどってはいけない。そう思わせる店を出屋敷線沿いに見つけた。イタリア屋台酒場「オッサミーノ」。赤提灯を吊るし、ブルーシートで雨風をしのぐ「屋台の中の屋台」的たたずまいは、正しく出屋敷テイストを受け継ぐ。

「堅っ苦しいのは苦手。お客さんと一緒に飲みながらやるのが好きなんです」という店主の赤川治さん(56)はイタリアン一筋40年。日本ではピザかナポリタンぐらいしかなかった時代にイタリアに渡り、30歳で梅田界隈に『カンティーナ』という店を開いたという経歴の持ち主。失礼ながらまったくそうは見えない。オープンは昨年7月。「25年大阪でやったけど、やっぱりバブル崩壊は痛かった」と大胆に路線転換。以前はタコ焼き屋だった、たった5席の店で再出発を図った、というわけである。

酒はビールか焼酎。ワインは予約制でボトル売りのみ。「予約が入れば買いに行くんです。あっはっは」と赤川さん。

ビールのアテにと、まず勧められたのがブルスケッタ。トマトを細かく刻み、塩コショウとニンニク、オリーブオイルで味付けたソースを、香ばしいバケットに載せて食べる。これがなんと100円。ひゃくえんですよ。信じ難い。隣では常連さんが5枚ぺろりと平らげていた。

豚キムチやショウガ焼き、客の要望次第で刺身まで供するゴッタ煮メニューながら、やはりそこはイタリアン。毎日タッパー1杯分だけ煮込むトマトソースが、この店のウリである。

「火はカセットコンロ、特別な材料は何も使ってない」というのに、練達の料理人の腕は、まろやかに舌に絡む極上の風味を作り出す。イカのトマトソース煮(250円)、トマトとモッツァレラチーズのスパゲティ(500円)と続けて食べても少しも飽きないのだが、少量生産だけに「売り切れご免」。ソースがなくなれば、ペペロンチーノやニンニクしょう油味でガマンするしかない。

同じ出屋敷線沿いの「ちゃんとドアのある店」に移る話もあるそうだが、このあまりにもフランクな「立ち飲み+イタリアン」の出屋敷テイストは惜しまずにいられないのだ。■松本創


21軒目 オッサミーノ

昭和南通7-195
17:00~23:45
第1・3木曜休
090‐9981‐9016
※移転後の場所です