サイハッケン アマで35年の市民劇団があった。

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公演まで1カ月を切り、書き下ろしの台本もようやく完成。舞台の上でのセリフ合わせもいよいよ始まった。

かつて尼崎は演劇大国であった。戦後まもないころ開かれていた市民演劇祭は、熱演また熱演の連続。1970年ごろには、市民劇団に高校の演劇部、加えて多くの企業に演劇部があり、切磋琢磨していたという。

その時代の熱気を今日まで語り継ぐ市民劇団がある。「劇団かすがい」。70年、県立尼崎高校(定時制)の演劇部OBを中心に結成。代替わりを重ね、30代の若いメンバーが主力となった現在も、アマチュアながら週3回の練習、年に数回の公演をこなす本格派。淡路島からのリピーター客もいるほどだ。

役者と裏方の区別なく大工仕事に精を出す。

「力を合わせて一つの作品をつくる。いろいろな仕事があって、それぞれが得意な分野を持ち寄るのが面白いんです」という代表の樋口信廣さん(60)は、演劇の魅力に取りつかれて45年。

「楽しいだけでなく、お客さんの心に何か残るような芝居をしたい」と話すとおり、有名な民話劇のほかにも、公害問題を取り上げた創作劇など、尼崎に根ざしたメッセージ性の強い作品も少なくない。5月18日から上演する『夕やけまっか』は、団塊世代の話。演出を担当する樋口さんが過ごした懐かしい尼崎の風景も描かれる。

稽古場にも公演の舞台にもなる劇団の拠点は尾浜町にある。大庄公民館、大物のビルの一室を経て、一昨年、念願のスタジオを手に入れた。もとは小さな鉄工所だったのをボランティアが手作りで改造してくれた。

そう、劇団を支えるのは団員だけではない。劇団かすがいを語るうえで欠かせないのが、「かすがいくらぶ」という応援団の存在。「ここまで続けてこられたのは、周りの人に後押しされたおかげ」と樋口さん。応援団の気持ちに熱い芝居で応え、また人の輪が大きくなる。その活動はまさに、人と人をつなぐ「かすがい」なのである。■永井純一


コミュニティシアターAQ

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尾浜町1-31-12