ちょい尼オヤジの 定年(リタイア)後
2007年、大定年時代が来るといわれる。定年延長や再就職の道もあるけれど、いずれはだれもが迎える第2のスタート。「田舎で老後を」と枯れるばかりじゃもったいない。ちょい尼オヤジたちは、こうやってセカンドライフを楽しんでいる!
家事するオヤジ 尼崎・男の料理教室
「自分でうまい肴を作りたい」「熟年離婚が不安」など動機は様々だが、オヤジの家事進出が著しいという。立花公民館で月に1度開かれる男の料理教室では、調理師経験37年の吉田清彦先生のもと、平均年齢50代後半の生徒12人が季節の料理に腕まくり。全員が調理に参加できるよう生徒数を増やさない、食材をできるだけ捨てない、といった吉田流の指導が人気だ。
「親の介護をきっかけに、家事の分業を考えるようになるもんです」と生徒たち。妻の不在時でも、自分で料理できるという安心感が自信につながっているという。この日のメニューはかれいのピリ辛煮付け、春野菜の煮浸しなど4品。「家族に味見してもらうんですわ」とタッパーに詰めてお持ち帰りするオヤジたちの姿が印象的だった。
宮本良一さん(63)
「そろそろ自分専用の包丁を買おうかと思ってるんですわ」
銀行退職後、先輩の紹介で教室へ。スーパーに行っても以前は売れ行きや社員教育、レイアウトなどに目が行ったが、今では「季節の野菜や魚が気になる」
鍛えるオヤジ 尼崎ゴールデンウェイトリフターズ
マラソン、水泳、ゴルフ。シニアのスポーツ熱が高まるなか、「健康づくり」よりさらに上を目指す競技志向の熟年アスリートが増えている。その究極といえそうなのが、市総合体育館に集まるツワモノたちが結成した尼崎ゴールデンウェイトリフターズ。重量挙げである。55~65歳のメンバーが日々バーベルを相手に自らの限界に挑んでいる。市内の大会はもちろん、全日本マスターズにも毎年参戦。
怪力だけではだめ。握り方やひじの使い方といった技術が物を言う。そして集中力。コツさえつかめば年を取ってからでも十分やれるという。
同体育館利用者のうち50歳以上は4割。ほかの競技でもシニアチームがまだまだ生まれるかも。
竹下彰彦さん(63)
「全日本の大会には80歳の人も出てまっせ」
「腹が出てきたから」と始めた競技歴も、はや30年。スナッチで97キロを持ち上げた自己記録は42歳のときだった。「年やからとあきらめたら体力はすぐ落ちる。続けることですわ」
働くオヤジ 尼崎市シルバー人材センター
会社で目いっぱい働いたけど、それでもやっぱり働きたい。そういう人には「地域」という職場がある。60歳以上の市民に仕事をあっせんする尼崎市シルバー人材センターは、年間受注額17億4900万円(平成16年度)、全国8位という有数の規模なのだ。登録者数4000人。「比較的狭い市域に、中小企業の元働き手が多くいるからでしょう」と同センター。要はオヤジの労働意欲が高い街なんである。
内容は、大工・表具仕事や造園などの技術系と、施設管理・清掃・宛名書きといった一般系。経験者ばかりとは限らない。たとえば5人で構成する「ふすま班」。瓦屋やお茶屋を引退した人たちがほぼ毎日、ふすま張りに精を出している。月収は平均6万円ほどになるそうだ。
内田義隆さん(67)
「一人前になるまで最低3年かかります」
元大工でセンター登録5年のふすま班班長。商品運搬や紙見本を持って受注先を回る営業を主に担当。「お客さんと接するのが、大工時代にはなかった楽しみですわ」