フード風土 43軒目 定食・中華 マミィ

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。

お母ちゃんが継いだ中華のバトン

手前は餃子セットA(小エビ唐揚げ付き)は750円。奥はチャンポン850円。右の一皿は新メニュー、衣をつけた揚げ餃子300円。

街で長く愛された店が姿を消すのは寂しく、惜しい。この連載で訪ねたいくつかの店もそうだけど、「後継者もおらんし、もうええねん」と閉店の話を聞くたび、もったいない、身内じゃなくてもやる気のある誰かに橋渡しする仕組みがあれば…と考えてしまう。よい店というのは街の財産なのだから。

そんなリレーが見事に決まった店がある。立花東通商店街の中華料理[マミィ]。創業50年、駅前の顔だった[チャイナ萬来]を引き継ぎ、今年6月に新装開店した。新しい店主の田淵志摩子さん(54)は、その厨房を22年間支えた料理人である。

「最初はまだ木造の店でしたが、来てみたら2階での宴会も多く、いきなり忙しくて…」

3人の子供を女手で育てねばならなかった田淵さんは、毎日朝から晩まで仕込みをし、揚げ物を揚げ、中華鍋を振り続けた。定休日以外に休んだ記憶はほとんどないが、「マスター夫妻によくしてもらって、すごく働きやすかったから」と微笑む。

田淵さん(左)と山井さんの新旧店主。

前オーナーの山井洋一さん(68)にとっては、母親と2人、市役所への弁当配達から始めた大切な店。ハングリー精神で築いてきた自らの歴史である。

「もう少し続けたかったけど、母が高齢でもあり、今年の春頃に閉店を決めたんです。そうしたら田淵さんが『よかったら自分にやらせてほしい』って。小柄だし、体力的に大丈夫かなと思ったけど、とにかく真面目で、きちんと仕事をする人。じゃあやってみたら、と」

こうしてバトンは渡され、看板メニューもしっかり受け継がれた。具沢山でとろみの強いチャンポン。先に蒸すことで野菜の甘みを引き出す餃子。種類もボリュームも豊富な定食類。小エビ唐揚げに中華丼…。

なかでもチャンポンは旧店の創業当初から一番人気。市役所への出前も多かった。「庁内を回るうちに麺がのびるんやけど、それでもみんな美味しいって食べてくれてね。この味が残るのは嬉しいね」と山井さん。

一方、田淵さんは「お母ちゃんの中華屋さんらしい家庭的な雰囲気に」との思いを新しい店名に込めた。「お客さんから『おばちゃん、生ビールお代わりと餃子ねー』と声がかかる、その一体感が嬉しいんです」

人の縁に恵まれて、店と街の物語は続いてゆく。[マミィ]は今日も千客[萬来]である。■松本創


43軒目 定食・中華 マミィ

立花町1-8-5
11:30~15:00/17:00~23:00
月曜休 TEL:06-6427-6608