THE 技 地元素材に挑戦した金賞スイーツ

ものづくりのまち尼崎に息づく匠の技の数々。最先端技術、職人技、妙技、必殺技…。
アマから繰り出されるワザに迫る

ケーキ工房ワタナベ
立花町1-16-22 TEL:06-6427-8188 10:00~19:00 木休

「珍しい素材を見るとケーキに取り入れたくなるんです」という「ケーキ工房ワタナベ」の渡辺聖児さん。看板商品は故郷福井の有名店の豆腐を使ったケーキだ。中でも、豆腐ロールケーキは生地にもクリームにも豆腐をたっぷりと使った人気商品。「飲み物がなくても、水分をしっとり含んで食べやすいケーキを目指しているんです」と聞いて、食べてみると…確かに独特のしっとり感!

昨年初開催の「尼崎スーパースイーツコンテスト」では、尼崎の二つの伝統野菜「尼いも」と「富松一寸豆」を使ったクリームサンドで見事ゴールド賞に輝いた。これまでケーキには向きにくいとされていた一寸豆に挑戦したところが、高く評価された。

新鮮な食材に恵まれた福井で育ち、母親の台所仕事を喜んで手伝う少年だったという。素材を生かすパティシエとしての舌は、この頃に培われたようだ。地元の調理師専門学校卒業後、有名ケーキ店やホテルで修業を積み、10年前に立花で独立した。

「これで完成というゴールはないんです。継続するから成長があって、それでお客さんに飽きられない味ができると思うので」という渡辺さん。毎日の微妙な気温差に合わせ生地を作る、いわば生地と会話する感覚は、回数や年数を重ねてこそと身に付くものだという。毎日、早朝から夜遅くまでケーキづくりに没頭する日々だが、「スタッフからは『ケーキを作っている時が一番いい顔してる』って言われます」と笑う根っからの職人。休みの日にも知り合いのケーキ屋を何軒か訪ねて研究にはげむ。どこに行っても発見があって、新しい素材や新作へのアイデアが湧いてくるという。「好きこそ~」を地で行く渡辺さんの新作スイーツが楽しみだ。


取材と文/香山明子
今年の尼芋奉納祭では売り子として渡辺さん特製の「尼いもタルト」350個を完売しました!