サイハッケン ウエイトリフティング道場が園田にあった。

長く住んでいても意外と知らないまちの愉しみ。「へえ~」と目からウロコの再発見!ディープサウスの魅力をご堪能ください。

井本監督(写真左端)の指導で、「どんどん重い重量をもてるようになるのが楽しい」という小学校6年生の八島健太朗くん(写真中央)

阪急園田駅の近くで信号待ちをしていたら、ドーンという鈍い音が聞こえた。ふと目をやると、高架下の金網に仕切られた一角で喧騒にまぎれ、バーベルを持ち上げる少年少女の姿、という何とも不思議な光景がそこにはあった。

看板には「尼崎ウエイトリフティング道場」。監督の井本勝さんによると、ここから全国上位の選手が育っているという。

井本監督の職業は消防士。非番の日に地域で子どもに空手を教えていたが、高校、大学とウエイトリフティング部で活躍した経験を活かしたいと思い、空手道場に通う二人の中学生に「ウエイトリフティングやらへんか?」と声をかけたのがはじまりだ。

尼崎ウエイトリフティング道場
阪急園田駅から高架下を神戸方面に徒歩3分。道場の大敵は「蚊」だとか。
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2009年、たった3人でスタートした道場だったが、翌年には全国中学生大会で5位入賞、2年後の大会では優勝というミラクルを起こした。「たまたま彼らの筋がよかったんですよ」と謙遜するが、その指導力は評判を呼び、今では9歳から68歳まで23名もの生徒を抱える道場へと成長した。

お隣は集会所なので、お葬式が入れば練習が中止になったりするが「地域の人に見られる、こういう場所でやっているのが自慢」と、監督お気に入りのロケーションだ。信号待ちの人に「それ何キロ?」と話しかけられることも。そんな気軽に参加できる道場を目指しているという。

「80歳で試合に出場する人もいます。努力をすれば少しずつ重量が増える楽しみは人生にも通じます」と井本監督は魅力を語る。

大きな舞台につながりやすいのもマイナースポーツならでは。尼崎の高架下から、世界を舞台に活躍する選手が輩出されるのもそう遠くない未来かもしれない。


取材と文/古川陽子●尼崎で働きはじめて7年目。A型、獅子座、戌年の34歳