THE 技 三代続く老舗が作る世界にひとつだけの麺

ものづくりのまち尼崎に息づく匠の技の数々。最先端技術、職人技、妙技、必殺技…。
アマから繰り出されるワザに迫る

今も昔も国民的フードの代表格「うどん」。幹線道路沿いには大手チェーンのセルフうどん店が賑わうが、かつては、尼崎の街のあちこちに小さな製麺所があったらしい。そのひとつ、老舗の製麺所が久々知の住宅街にある。

安田製麺所の創業は昭和23年。近隣農家から持ち込まれる小麦を挽く仕事から、製麺所へと発展。現在製造するのは、うどん、そば、中華麺、パスタまで。チルドから冷凍、生麺まで幅広く加工し、それらを業務用麺として大手居酒屋チェーンを中心に納める。取引先は実に250軒以上で、10年ほど前からはアメリカ、カナダといった海外へも出荷するほど。中でも冷凍麺の開発にいち早く着手し、某大手食品メーカーの試験販売の開発も担当した。世の中で最も早く冷凍うどんを作ったのは、ここ尼崎だったのだ。

約50種類の定番商品を作りながら、お客のニーズに応じたオリジナル麺にも対応するのが安田の真骨頂。うどんの基本材料は、小麦と水、塩のみだが、小麦の種類、塩の選び方でバリエーションは無限大だという。3代目社長の安田亨さんは「子どもの頃から家で朝からうどんを食べてました」という麺育ち。お客のニーズを聞き、オンリーワンの麺を生み出すのは、子どもの頃から麺を食べ続けた安田社長の舌の成せる技なのだ。

創業時から変わらない小さな敷地に建つ3階建ての工場。内部はそれぞれの工程を担当する麺製造機が効率良く配置され、上階から下階へと鮮やかな連携プレーで次々に麺を作っていく。その製造量たるや、阪神間でナンバーワンの一日2万食。小売はしていないが、安田の麺を知らずに食べている人は多いはず。「味を確かめたい」って人は、JR立花駅すぐ北、唯一の直営店「やすだ」へどうぞ。

安田製麺所 久々知2-2-10
http://www.yasuda-seimen.net


取材と文/香山明子
飲酒のシメがラーメンではヘビーなお年頃。「やすだ」のソバにお世話になってます。