尼崎コレクションvol.21 《大正13年の阪神電車広告(はんしんでんしゃこうこく)》

尼崎市内に現存している逸品を専門家が徹底解説。あまりお目にかかれない貴重なお宝が歴史を物語る。

1905(明治38)年4月12日、阪神電鉄が開業しました。今年はそれからちょうど110年の節目の年に当りますので、これを記念して、阪神沿線に所在する7つの博物館・美術館が「阪神沿線の文化110年」を共通テーマに、3月から8月にかけて共同企画展を開催しています。尼崎では、尼崎市総合文化センター美術ホールを会場に5月9日(土)から6月14日(日)まで、「歴史とアートで綴る阪神沿線あまがたり展」を、公益財団法人尼崎市総合文化センターと尼崎市教育委員会(文化財収蔵庫)の共催で開催します。 そこで、今回は本展の展示資料から、阪神電鉄本社も所蔵していない、とても珍しい1924(大正13)年の阪神電車の広告を紹介することにしましょう。

この広告は、上段には阪神電車の路線図、中段には電車に乗る際の11項目の注意事項が記載され、下段には11項目の注意事項のイラストが描かれています。この注意事項を順に見ていきますと、改札は押し合わずに順番に、プラットホームでは静かに待つ、電車が来たら順番に乗る、座席を譲り合う、車内では他人の迷惑にならないようにする、窓から物を捨てない等の注意事項が列記されており、90年前も今も電車に乗るときの注意事項が全く変わっていないことに気付きます。と同時に、人間って進歩しない動物だということも良く分かりますね。注意事項は9項目目までは全て「○○ませう(ましょう)」となっているのですが、10項目目でいきなり「そら来たぞ…通らずに待って居れ。」と命令口調になり、最終の11項目目は「油断すな学びの道と…電車道。」となっています。こうなるともう注意事項というよりも格言の域ですね。ほのぼのとしたイラストとも相まって、製作者の遊び心が満載された、見る人を引き付ける魅力ある広告チラシです。

歴史とアートで綴る 阪神沿線あまがたり展
尼崎市総合文化センター美術ホール

展覧会名の「あまがたり」とは「あまがさきのものがたり」を略した造語です。展覧会では、尼崎南部地域の歴史や美術、阪神と尼崎との深い関わりなどを紹介していますので、ぜひご観覧ください。

こちらは入場無料!
文化財収蔵庫

9:00~17:30 土日祝も開館(月曜休館)●南城内10-2 TEL:06-6489-9801