サイハッケン 若者がシャッター街をこじ開けていた

長く住んでいても意外と知らないまちの愉しみ。「へえ~」と目からウロコの再発見!
ディープサウスの魅力をご堪能ください。

ライブスペースtora

怪獣ショップ「たんちゃん」

ギャラリーショップPIC

かつて生鮮食品店が立ち並び、買い物客で溢れた尼の台所、三和市場。今は人影もまばらなシャッター街に往年のにぎわいを呼び戻そうと、精肉店を営む森谷寿さんは、特撮映画ファンが集う「怪獣酒場」などディープな企画で奮闘中。そんな三和市場に、若者の新規出店が相次いでいると聞き、さっそく訪ねてみた。

薄暗い通路に忽然と現れるシンプルな白い空間は、ギャラリーショップ「PIC」。河元藍さん、野村紫穂さん、光崎ちひろさんの若手作家三人が「もっとアートを身近に」と、アクセサリーやリトグラフなど自らの作品を展示・販売する。

その隣はライブスペース「tora」。鉄骨剥き出しの天井やステージの近さが雰囲気あるライブハウス。ミュージシャンでもある山田哲史さんが「市場という場所が面白い」と惚れ込みオープン。月10本のライブを開催するという。

カフェ&バー「とらのあな」は、特別にブレンドしたコーヒーが自慢。「怪獣酒場」を開くイベントスペースが憩いのカフェとして再出発。店長の北川星子さんは、「市場の人は温かくて居心地が良い。いろんな人がつながる場所にしたい」と話す。

店先にフィギュアや雑貨が所狭しと並ぶのは、怪獣ショップ「たんちゃん」。古書店を営む中西隆次さんが開く怪獣グッズ専門店。マニアだけでなく、お孫さんを連れたおじいちゃんなど、ほのぼのとした光景も。

これら全てが、ひと月の間に開店した。「若い人達の感性で市場の空気が変わった」と森谷さん。店が減り活気が失われていく中、「なんとかせんと」と、歯を食いしばって仲間と頑張ってきた。周りも若者の挑戦を暖かく見守っているという。「辛抱してたら、ええこともあるんかな」と笑顔を見せ、怪獣のように大きな体で「まだまだ、これからや」と吼える。シャッター街をこじ開け、爆発的に進化する三和市場から目が離せない。


取材と文/伊元俊幸
控えめでアナーキーな丸刈り系中間管理職。43歳。